表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あおい夢~キラメキDaughters~  作者: 千賢光太郎
8/44

須田愛良に尋ねてみれば

お読みいただきありがとうございます。

朝が来た。自転車をこいでいる。緩やかで気づかない下り坂、激しいあかんべえの上り坂、油断したら破滅のまさか。学校について教室へ入れば、須田愛良が澄らなる微笑みで声をかける。


(昨日いきなり流れたテレビ画面に、須田愛良そっくりの女の子がいた。尋ねてみようか)


「英子、どうしたの、怖い顔を浮かべて」


「愛良、

1 キラメキドーターズって知っている

2 今日、私は夢を見たんだ」


あなたはどちらを愛良に尋ねます?

下した決断は――


「英子、私は夢を見たんだ」

「どんな夢」


雲の隙間より漏れる影が、にこやかな顔を浮かべる愛良を照らす。


「部屋が凍っていた。私は弟と閉じ込められて、テレビ画面からあなたが出てきたの」

「私、どんなことをしていたの」


こわばるけしきもなく、前のめりに体を乗り出す友達。


「かわいい子に変身したの、確か、キラメキドーターズってやつ」


瞬きを行い、まっすぐ見つめる愛良。


「どうした、大和。なんで焦った表情を浮かべているんだ」

「い、いや、なんでもないよ、広」


隣の席に座る明日谷大和、一瞬だけ目を合わせるが、すぐに友達の風間広へ戻しぬ。


「英子、今、なんていったの」

「キラメキドーターズ」

「ごめん、聞こえない」

「キラメキドーターズ」

「ごめん、本当に聞こえない、英子が見たものだけは」


紙を用意して文字を書けど、ひらりぃと消えてしまう。もう一度『キラメキドーターズ』書けば、やはり言葉は消えぬ。


「英子、どうしたの。シャープペンシルの芯はきちんと出ているの」

「出ている、でも、書いたらすぐに消える」


張井は考えた。自分は今、小野田英子であり、張井英子ではない。ここは張井英子が存在しない世界。何かが違うもの。地球であって漫画の中にある地球の世界。この言葉は今、出てきていない。もしかして、須田愛良には知らせてはならない世界なのか。武彦よ、と同じように。


「英子、英子」


愛良が肩をゆらすと、目を閉じた。


「ごめん、愛良。私が見た夢は愛良そっくりの女の子が出てきた。魔法を使った。愛良はかわいかった」

「大和、気のせいか」

「どうしたんだよ、広、俺の目をじっと見て」


隣に目をやると、広が青ざめた表情を浮かべる。


「いや、お前の目がすごくキラキラ光って」

「光っているって、僕は泣いてないよ」


大和が広から顔を背けて目を合わせると、影はないが顔色が白に染まる。


「そういう意味じゃなくて、ダイヤモンドのように輝いていた」

「ダイヤって、そ、そうなのか」


大和と愛良が目を合わせぬ、二人の間に広がる温かき()、桜の花より一段こいけしきに染まる。


「愛良、ちょっと聞いていい。あの子が好みなの」


愛良の口元が少し微笑み、瞳はちらちろ縦に揺れる。


「青春か、いいねえ」

「英子、おばさんみたい」


チャイムがなると、すぐに国語教師がいらっしゃる。

<語句説明>


朝が来た……NHK連続ドラマ「あさが来た」。昭和を生きた女、あさの人生を描く。


影……光の意味もある。光線が物体を遮ったときできる、黒い像。


けしき……景色と気色を掛け合わせている。

景色:自然の風景や様子 気色:人の素振りや様子


こいけしき……濃い景色と恋気色をかけている

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ