雪だるまといじめっ子
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冷えは人の敵、凍れば細胞の活動は収まり、血の流れも滞り、思考にも化学物質が行き届かず、己が真実も塊に変わる。
「我は問う。お前の息子は」
「武彦」
鞭を叩く音、部屋に響きぬ。
「我は問う、武彦と同じ年齢だったとき、お前は足立涼子を醜き豚女と馬鹿にしていた。覚えているな」
ちらり、瞳を傍聴者に向ける。白い息を吐きながら座る一人と二匹。瞳を心に向ければ、
(私は確かにブスだった足立涼子に対し、豚女と言っていた。でも小学生で、私は彼女をいじめる気などなかった。足立は泣いていたけれど、私は笑っていた。『はい』といわないと、武彦だけでなく進、ロロナにナツリも。でも、私の恥ずかしい部分が彼らの前にさらけ出されてしまう)
「もう一度、問う。武彦と同じ年齢だったとき、お前は足立涼子を醜き豚女と馬鹿にしていたな」
――決断をしてください。
■ はい
■ いいえ
「はい」
リモコンは氷に満たされ、足がカチコチ凍り、過去の所業に脇から汗がじんじんと出る。
「聞け、張井英子は己より醜き者を貶す人間なり。傍聴席にいる者よ、足立涼子よ。いじめっ子である張井英子にどんな罰を下すべきか。武彦を代わりにいじめろと」
やめてと言えぬ。口元に入る冷たき霧に口も動かせず。部屋はもうもうと白く満たされる。
「武彦をいじめるで裁判は終結だ。張井英子が行為を今、武彦に向けようではないか。む、ドーターズめ、動きよったか。ではこれから私は私に制裁を加える。制裁こそ罪滅ぼしなり」
雪だるまは『武彦よ』を1分ほど持てば、テーブルにおいて、再び画面に入れば、霧も失せぬ。
※ ~いいえを選んだ場合~
「いいえ」
リモコンは氷に満たされ、進は足がカチコチ凍れども、過去の所業に脇から汗がじんじん出らる。
「嘘つきめ、お前の目にすべてが現れているわ。なぜ私から目を背ける。知っているのだろ。私が」
雪だるまが溶け、中より現れた怪物は……終