みんなとはぐれてしまった
おはようございます
「あれ、広」
「英ちゃん、どうしてここに、というかここはどこ」
広が学校におり。
「学校、広、美術館にいたんじゃないの」
「大和に電話をかけた後、いきなりあたりがおかしくなって、道路がなくなって、気づいたらここにいた」
ばくり、ばくり、ばくばく。音がなり、目を向けると黒い影に覆われた怪獣、風景を食べる。
「空を、大地を食べている。お、俺、言っていること、おかしい」
「いや、正確な表現よ」
ナツリが言えど、英子のみうなずく。食べた後は真っ暗一面なり、陰影もなし。
「早くこっちへ」
校内に入れば怪物、入り口前にて眠る。体が軽くなりぬ。
「あ、あれ、武彦は」
「小野田さんがずっとおんぶしていたはずじゃ」
武彦、煙すらなし。
「あそこ」
進が指をさせば、2階の校長室にある窓を叩きたり。血の気なく、両手で強く窓を叩けば逃げぬ。
「どうしてそこに」
大地揺れ、床は斜めに上がり、天井はひっくり返り、仲間とはぐれ、闇にひょうひょうとした音、
「み、みんな」
ぽつりと光あり、向かえば小型のLEDライトなり。
(お化け屋敷。私は今、一人。みんなの気配もない。普通の廊下、壁は老朽化、肌は老化していない。これはろうそくか。ロウの色が違うろうそくが4つ並んでいる。白い、火のついていないロウが一つ。赤・青・黄・緑。クリップボードがある。
あるろうそくだけ本当のことを述べている。
赤:俺は赤だ、間違いない
青:黄色は俺を通り過ぎた
緑:赤が俺の色を奪いやがった
黄:赤が横暴すぎて困っている
本当のことを述べているろうを白いロウへたらせ)
直感に身を任せ、ロウを選べば「きぃ」音を立て、扉が開きぬ。
「お、お母さん」
息ができぬ。いる。彼がいる、息子がいる。武彦がいる。
「武彦」
気づく。今は小野田英子で張井英子にあらず。
「わ、私は」
「おかあさん」
抱き着きぬ。冷たい手、指、ジワリと温かみがあふれ、頬から一筋の光、震えを抑えられず、
「武彦」
「お母さん」
手を握る。温かい。ぎしい、ぎしい。背筋冷たく、指の感触なく、
「あ、あいつが来る、怪物が」
「武彦、私から離れないで」
息子の手、温かい。
扉より現れる白い顔の「張井英子」、包丁を握り、のたり、のたり。
周りを見れど、武器はなし。逃げ場もなし。隅に追い詰めらるる。
す、す。
無口で迫る張井。なんと不気味な存在か。
「やめて、怪物」
包丁を天にかざせば、体が勝手に動きぬ。ゆっくり下す包丁。傷ひとつなくかわし、
「逃げるよ」
扉を出て、閉めれば、右も左もわからぬ道を走り、一つの部屋にたどり着く。
「図書室だ」
入ると、一冊のアルバムのみぞ、椅子にあり。