しゃべる犬と猫
お読みいただきありがとうございます。
金星が怪しく輝く。両脚がくがく、瞳はかくかく、ドリンクはごくごく、精液はどぴゅどぴゅっ、声はのどでぶるぶると震える。
「えいこ、私はナツリ、こっちはロロナ」
「アンアン、ロロナは英子に会いたかったの」
猫がナツリ、犬がロロナ。
「えいこ、その本に少年が閉じ込められている」
「少年って、武彦」
ナツリはうなずき、ロロナが前に出て、人の手をべろべろなめる。
「ロロナたちも本当はいるべき世界に帰りたいけれど、その子が閉じ込められて、帰れないの。だから英子、手伝ってほしいの」
金色に輝く犬の瞳、銀色に輝く猫の目に、引き込まれる。
「助けるってどうやって」
「えいこが持っている本、今なら読めるはず。この本は本来、アルムの世界にあって、私とロロナが間違って地球に置いてしまった。本は今、まっさらな状態、少しずつ文章を復元しないと、私たちはあちらの世界へ戻れない」
ナツリは小説を叩く。本をめくれば、数ページだけ文章あり。
――ママ、怖いよ、真っ黒な影が僕を追いかけて来る、ああ、扉にカギがかかって僕は食べられる。
普段は海に潜っている奴を、誤って踏みつけてしまい、ヒレから毒針を突き刺し、殺そうとしてくる。
奴の名は――
■ A
■ B
■ C
■ D
■ E
――ぐしゃり……終。
思い浮かべ、すぐ別の妄想に置き換える。
「英子、しっかりするの」
ナツリが体をこすりつければ、重たい気分が取り除かれる。きらきらと輝く星が夜空を満たし、春月はただ見つめる。
「犯人を当てて、理由を当てればよいのね、犯人は」
あなたはおわかりでしょうか、答えは明日。