2階の広間と
今日は大みそかです
2回の広間にたどり着けば、左右に広がる額縁、芸術はすべて風景なり。
「姉ちゃん、どうして2階の広間へ」
「21453 fukidasidane 広い空間 まの当たりにして。頭だけを読むと、2f広ま」
「なるほど、トンチか。残りはB1、いや、地下一階のワイン、そして玉座の裏か」
手を叩く大二郎、アンアン吠えるロロナ、あたりをみて弱い声でなくナツリ、
「おお、この絵、怖い」
「どうした、進」
大二郎が尋ねれば、
「風景なんだけど、木々の間を見ると、睨んでいる」
「確かにそう見える。うん、これはボタンじゃないか」
ボタンを押せど、何も起きず。
「えいこ、こっちにもボタンがある」
「犬だから押したくても押せないの」
吠える犬と猫。
「適当に押したらダメみたい」
額縁の周りに絵のタイトルあり。
1 青き闇
2 かすかな紫空
3 赤き大地
4 黄道12星座
5 たなびく緑の木々
残りひとつに書いてある文あり。
色は回る。HSVとして扱え。0から360度まで。
「色か」
スマホをいじり、調べて入力すれば
(回答は後日)
芸術画は裏返り、女の人と子供を抱く絵に変わりぬ。
「だれだ、このおばさんと子供」
「あ、ああ、私だ」
みんな振り向く、こぼれる涙。感じたわけではない。新たな命を生んだときの痛み、希望、成長してほほえましい反面、反抗して思い通りいかない苛立ち、一緒に手をつないで歩き、小学校に入り、すくすく育つ彼を見守る母親。
「姉ちゃん」
「なんでも、ないわ」
涙を手でぬぐえば、
「この絵だけが怖くて、後は見ていてほんのりとした気持ちになる」
大二郎が右手を震わせながら指をさした場所を見れば、子を殺した親の顔なり。親の顔、英子にあらず。されど、忘れられぬ顔なり。
「こいつは」
「英子を一度、殺した奴なの、アンアン」
「姉ちゃんをあの世界で刺した奴じゃないか」
震えると、大二郎が手をつかめば、震えは更に止まらぬ。
「だ、大丈夫」
揺れを感じたまま思う。
(この絵に載っているのが私、張井英子だとすると、ここにいる怪物の正体は張井英子、いや、私。じゃあ、あそこで私は私に殺されたとでもいうの。武彦がこいつから逃げ回っている。この絵が示す意味が仮に正しいとしたなら、間違いなくこの化け物は私、いや、張井英子。武彦は私の何から逃げているの。私が嫌いなの。いや、私は怪物であることに、私は気づいていなかったの。私は)
手首が震える、何度もつばを飲む、
「な、なあ、次は何をしたらいいんだ。ここから抜け出すために」
大二郎がつぶやけば、
「次に行く場所は地下のワイン倉庫」
ナツリが先に進めば、たくさんのワインが寝ており、
「色、全部赤ワインだ」
「不気味な場だと、すべて血の色に見える。お、白ワイン発見」
大二郎が取り出せば、白ワインに番号あり。
「1-2って書いてある」
「こっちにもあった。3-3だ」
「えいこ、ここに5-2って書いてある」
「アンアン、1-Dなの」
ふと、何かを手繰り寄せる。
「2-B、そしてこれは3-B」
「姉ちゃん、1-Aだって」
さらに何かを手繰り寄せる。とても身近なものだ。
「小野田さん、ここにワインを入れるところがある。女性の写真だ」
みんなで見ると、
「あ、わ、私だ。2-●、この制服、間違いない。ねえ、みんな、Bとだけ書かれた瓶を探して」
「B、だね」
ただ、そこに止まる。
(あの時の私は社会のことなど考えないで、アイドルや人をからかって遊ぶ、悪い女だっけ。私は、今思うと悪い女だ)
瓶底にBと書かれたものを入れると、手紙が返ってきた。
「張井英子へ。風間広が今、怪物に追いかけられている。あなたの始末をあなたが付けなければならない。Cの部分はわかるよね。ある部分にボタンがある。そこに武器を隠しておいた。武彦君救出まであと一歩。がんばれ、私は小野田英子さんを救いに行く。石井より」