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あおい夢~キラメキDaughters~  作者: 千賢光太郎
34/44

人から言われたとき、実はあなたを示している

おはようございます。

「大和君、それに英子」


須田愛良が声をかける。


「愛良ちゃん、よかった、無事で」


涙を浮かべる明日谷大和の肩を叩く。


「デートの邪魔になるから消えるわ、じゃあね」


彼らと別れ、ジェットコースターを通り過ぎると、


「アンアン、英子、ロロナも遊びたいの」

「いいよ」


気楽に走る犬を見れば、


「私が見たあれは何だったの」

「何かあったの、えいこ」


ナツリが尋ねる。


「武彦がスーツを着た何者かに切り刻まれていた。でも武彦は消えた。いや、はじめは武彦ですらなかった。それに奴は言った。武彦を切り刻みたい欲望はお前、いや、私にもあると。私が息子をぐちゃぐちゃに切り刻む姿なんて、喜ぶわけないっての」


ごうんごうんと音を立て、観覧車に乗る。広は無事だった。電話を終えて観覧車を降りると、ナツリが凍えで鳴いた。


「えいこ、広と話をしている時、私なりに考えていた」

「何を」

「えいこを襲った何者かが言った意味。武彦君を解剖したい気持ちがえいこにもあるって意味」


夕日が落ちんとす。


「えいこにも、時と場合によって子供を切り刻むまではいかなくても、それに近い気持ちを持ってしまいたくなrこともある」

「それはない。母親だもの。第一、子供を解剖するなんて、思いすらしない」

「今はそうだとしても」


猫の一声につばを飲み込む。ロロナが歌いながらなく。


「えいこ、生き物は今と未来で考えが変わる。たいていのことが起きても考えは変わらない。でも、えいこの生き方において、とてつもないピンチが一家に訪れたとき、悪魔のささやきに耳を傾けてしまい、間違った道をとってしまうこともある。そうでなければ、人間は誰もが地獄の道に向かおうなど考えないし、えいこがそもそもこの世界に来るとも思えない」


何も言えぬ。心にぐつぐつ煮える気持ち、怒りとは違えど、うまく表わせられぬ。


「黒い影はそう伝えようとしたのかもしれない。これは私の推測。たぶん、間違っていると思う。でも、えいこの顔を見ていたら、あながち外れすぎていないと思う」


遊園地は明かりがともる。英子たちは家に帰り、風呂に入り、天井を見上げる。


(私は武彦を解剖する気など全くない。あいつは何が言いたかったのだろう。ナツリのいうように、あいつは悪魔のささやきにそそのかされた奴なのか。それともあちらの世界で『犯罪者』として、悪いことをしていたのだろうか。第一、それが武彦を救うのに、何の意味、考えがあるの。武彦を救うのと、黒い影の気持ちを考えるなど、全く無意味、風呂場はどうでもいい考えが次から愚痴へと浮かぶ。第一、武彦はあちらの世界にいるのに、気づいたらこちらに戻る。広は出会えているようだけど、私は浜、ろくに武彦を助けていない)


風呂から上がり、数時間たって眠りに着こうと思えば、パラパラとめくれる音があり。ナツリは目を覚ませど、ロロナはいびきをかいて寝たり。


「えいこ」

「うん、読むわ。


英子は自分の部屋にあるテレビ画面から、武彦が図書館にいるとわかった。アルムの世界でなく、こちらの世界にある夢路市立図書館だ。早速向かうと、一冊の本が目に入った。なぜか大二郎が読んでいた。


声をかけると良い雰囲気になった。英子は本の一部分を目にした。


男に解剖された武彦の肉体は、アルムの国にある王様へ献上する。武彦は解剖されて肉が散らばっているけれど、命はある。アルムは夢の世界。想い一つで彼は原子にもなれば神にもなり、怪物にもなれる。ただし条件が必要で、普通の人間が思い付かないような姿を浮かべる。普通の人間には法や倫理が生まれたときに備わっているから、『己の快楽』のためだけに狂った行動をしようなど、やろうと思えば脳内が騒ぎ、止めに入る。だがわずかな人間は法や倫理などを通り越して、己の探求にすべてを費やす。狂った者が他人に対し、ゆがんだ欲望を持てば、他人はゴミにもなるし、神様にもなるし、性転換もできる。狂った人は1秒で慣れる世界ではない。日々の積み重ねがなければなれぬ姿だ。


英子は分厚いメモを読み、頭が痛くなった。すると、大二郎が彼女を支えた。


「お嬢さん、あなたもアルムの世界に興味はおありか?」


頬が鋭くとがり、瞳はとても細く、笑みを浮かべる紳士が英子に声をかけた。大二郎は――」

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