遊園地といえばお化け屋敷、そこで
おはようございます。ここ最近、ある仕事が締め切りに追われ、書く暇がありません……と思ったら、すらすらと書けるではありませんか。こんな体験、ありませんか?
年を取って遊園地に行けば、子供とは違う事実に気づく。子供は遊びがすべてなり、大人は遊びのほかに回りも気をつけなければならぬ。
「英子」
ロロナにナツリ、人込みをかき分けて走り、
「武彦君はいないの。大和君たちはまだ見つけられないの」
「私もよ。見つけたら連絡してね、こっちも連絡するから」
「アンアン、わかったの」
ジェットコースターを見て、観覧車、ウォータースライダー、お化け屋敷、シューティングマン(電子猟銃を使って、的に当てる場所)を歩けば、
「じゃあ私たちの実力だね」
須田愛良、明日谷大和の手を握れば、彼はゆでたタコのごとく、まともにしゃべられぬ。
(いた、大和はあまり好きじゃないけれど、愛良と一緒にいる時は面白い)
首を軽く横に振り、胸に手を当て(ロロナとナツリにも大和らの居場所を教えるため)
「あれ、愛良に大和じゃん。二人とも、デートしているの」
大きく声をかければ、
「「いや、これは……」」
「はあ、大和なんかと付き合ったら、愛良の今後が心配だけど」
大きなブランコが右へ揺れる。
「なんでだよ」
「あんたたちは性格が似すぎているの。だから愛良が落ち込んだら大和も落ち込む。昔、い、いや、まあ、とにかく」
少し首を横に振り、嫌味あふれる女として、
「愛良は大二郎みたいな子がお似合い。じゃあ」
その場よりすぐ去りぬ。
「英子、大和がかんかんに怒っているよ」
ロロナ、ハッハッハと息を漏らせば、
「あれで怒らないなら、本当に別れるべき。私みたいな嫌味な女がいるから、あの二人は絆をより深めようと動くの。あー、嫌いな奴の天使になるなんて」
「えいこ、どうして嫌いなの、大和君を」
あたりをむけば、人は誰も犬猫と語る人間を気にせず、
「女らしくて気に入らないだけ。それにあいつ、アルムの世界だっけ、あそこで女の子にたくさん囲まれているじゃん。それも大和を気に入って。都合がよすぎるの。だから私は嫌い」
「えいこがもし、素敵な男の子に囲まれていたら、気持ちは変わっているかも」
ナツリが微笑むと、ううう。
「どうしたの、ロロナ」
「何かが来るの、英子、ナツリ、あそこ」
ワンワンワン、強く吠えれば人は振り向くも、何も見えず。されど、紫色の液体が大和のあたりを覆い、ぐわりと飲み込めば、
「い、今のは」
電話が鳴り、出れば、
「英ちゃん」
「広、どうしたの」
「これから出かけようとしたら、いきなり画面が乱れだして、大和が食われたんだ。俺も今、画面に引っ張られて、変なところにいる」
ごくりとつばを飲み込めば、電話がいきなり切れる。
「愛良とアスナそっくりのお姉さんが、走っていくよ」
「追いかけるよ」
ロロナにナツリが走って追いつけど、犬と猫に気づかぬ須田姉妹。
(早い、私が遅いだけなのか)
二人はお化け屋敷に入りぬ。
「すみません、チケットをお願いします」
入口に言えど、誰もいない。犬と猫もおらず。
「は、入ります」
ゆっくり扉を開ければ、あたりは暗く、ほのかな薄い影を光として歩く。
(お化け屋敷は夫が生きていたとき、5歳だった武彦と一緒に入ったっけ。武彦が泣きながらも、試練を次々とクリアして、男の子だなあと思った。武彦は今、一人。ここにいるのかな。昨日、めくれた小説を読んだら、武彦がお化け屋敷に入ると、大和が神隠しにあって、須田姉妹がお化け屋敷に入ると書いてあった。ここまではその通り。その後が何も書いていない)
ガサガサ。
「ロロナ、ナツリなの」
振り向けば口の大きな怪物あり。されど襲い掛かる気配なし、怪物が横に人の形をしたものあれば、丸のみし、いびきを立てて眠りにつく。
「何なの、こいつ」
つぶやけば、カーテンより映像が流れ、風間広が逃げ回る姿、映りぬ。携帯電話を取り出し、彼に電話を掛けると、
「英ちゃん。今、どこにいるの。俺はまた変な場所にいるよ」
「わかってる、あなたの姿を、み、見ているもの。意味がわからないと思うけれど」
「いや、大丈夫。英ちゃん、俺の前に画面があって、愛良ちゃんとそのお姉ちゃんが今、お化け屋敷にいるんだ。ただの化け物屋敷でなく」
うなずく。
「広、そこに武彦もいるかもしれない。いたら教えて。私も今、お化け屋敷にいるの」
「まじかよ。英ちゃん、後ろに何かいる、かも」
後ろより何かが近づく気配あり。心臓に手を当て、
「英ちゃん、気をつ」
電話がいきなり切れる。ぽっと光るあかりを右斜めに見つけ、向かえば、
「懐中電灯。ホラーゲームの世界にいるみたい」
照らせば、倒れている一人の男あり。
「大和!」