黒い料理長と息子の逃亡
おはようございます。今日もよろしくお願いします。
「誰だ、君たちは」
黒い煙に包まれた何か、フライパンを片手に料理す。
「ここはどこ、あなたは何をやっているの」
尋ねれば、
「料理をふるまっている、見てわからないのか」
「オーダーが入りました」
黄色い声が響き、暗闇よりウェイトレスが現れる。瞳に光はあれど、動きに違和感を抱きぬ。
「ヤナミ、こいつ、人間。ロボットみたい」
「彼女は生きているよ」
真っ黒なコック、ウェイトレスの頭を軽く叩けば、
「ほう、青い人を食べてきたのか」
「あいつらも食べますか」
「支払うべき請求書が間違っていたら、な。そうだ、そこのお客様にも料理をもてなそう」
ウェイトレス、国利と頭を下げ、黒い料理人、真っ黒な物体をさらに載せれば、
「お待たせしました、オムライスでございます。請求書です」
カチカチ、歯を鳴らす音に震える心。
「お客様、払えないなら、お肉として払ってもらいましょう」
紙を渡せば領収書にあらず。請求書でもない。
x,y,t,gはすべて1から9までの数。
x,y,t,gはすべて別な数とする。
x+y=t
x-y=g
t*g=t
t*x=gt
t*y=g0
料金:
x= y= t= g=
それぞれ当てはまる数字を答えよ。
「請求書だ、答えられないなら君たちを肉にして出荷するだけだ」
体が固まり、しびれる。
「あちらのお客様がお会計を支払うそうだ、行ってこい」
「はい、わかりました。お支払いが間違っていたら、食べてきますね」
闇に消えゆ。
「早く払え」
黒い奴は近づく。
「英子、奴は間違えたら私たちを食べるつもりだ。考える時間はあるぞ」
「考えるといっても、これはとんちかな」
かつ、かつ、カツ、カツ、小幅で歩く黒い奴。
「一つ聞いていい、あなたが言う払うって、ここに数字を埋めればいいのでしょ」
「ええ、そうしてくれれば、払ったことになりますよ」
<回答は後日>
「ありがとうございます。では私、休憩するから、ちょっと休んできます。その間、お客様に料理をふるまってください」
彼もまた暗闇に消ゆ。
「何が起きているの、何が何だかさっぱりわからない」
キッチンを見れば、正面のコンロにテレビ画面あり、スイッチが付いたのか、逃げまとう武彦を見る。後ろから得体のしれぬ怪物、追いかける。画面は切り替わり、上空より迷路となって見える。
「武彦」
「だ、誰」
上を向く息子。どきりと震える腹の底、声を出せ、声を出せと見えぬ何かが囁けば、
「武彦、あなたのお母さんよ」
「お、お母さん」
つばを飲み、目はパチパチパチ、手足にしびれ、声も震え、
「た、武彦、まっすぐ走って」
「英子、落ち着けよ」
ヤナミが低い声を出し、こぶしを握れば、
「ありがとう、ヤナミ」
「私にも関係があるからね。大和に愛良も武彦君と同じ道を逃げている。まずは左だ」
伝える、右へ曲がれ、左へ行け、まっすぐ進め、走って、飛んで。すいすい進む息子。ヤナミは何も言わぬ。
「この先は何もない」
迷路でいうゴールを彼が進めば、光に満ち溢れ、
「姉ちゃんが戻ってきた」
目を開ければ、進が深く息を吐いて、ロロナが頬を舐め、ナツリはささやく。
「武彦君は無事、話ができただけでも大きいね」
「う、うん、そ、そういえば大和に愛良は」
「大丈夫だよ、姉ちゃん」
進がベッドに腰掛けると、パラパラとめくれる小説、彼が手に取り、
「武彦は遊園地で遊んでいる。だって」
答えは後日発表です。




