本屋で見つけた「息子」
お読みいただきありがとうございます。
難しくて訳が分からない下手くそな文章と思っても、
演出の一つとしてお楽しみください。
ブクマや評価など、感謝します。
授業が終わって須田愛良と別れ、すぐ自転車に乗って武彦の行方を捜す。釧路市春採と変わらぬ地形なり。ひぶなも逃げる白蛇の坂を下り、蛇頭を突き刺す青と黒と橙の石炭列車、踏切が開いてこなたかなたに向かう車、輪廻のごときコインランドリー、衣装は変われど一生は変われぬ衣類店、車と人と金網をすり抜け大型書店に向かえば、
「コーチャンフォー(四頭だての馬車)でなくサイレントホース(静馬)って」
店に入れば、きらびやかなる光と、心をどんどこ叩く音に歓迎され、雑誌コーナーを読み漁れば、
『武彦よ』本を見つけた。
表紙は張井英子が息子で、手に取り中身を読めば白紙なり。かの本、同じものはあらず。
「すみません、この本、中身がないですよ」
近くで書籍整理を行う男性店員に尋ねれば、
「書いてありますよ、××……●●~~」
わけのわからぬ言葉に耳を疑い、再び聞けど答えも変わらず。本を買い、小野田英子が住む家に帰りぬ。警察に捜索願を出そうと思っても、本を読んでいたら、いきなり吸い込まれた。非科学的な事実を伝えても、あなたは本気で受け取るでしょうか。
「ただいま」
「お帰り、姉ちゃん」
英子より二つ年下の小学校6年生、進が声をかける。
「ずいぶん遅かったね」
「本屋に行ってたのよ」
「本屋か、うちの友達がまっさらな本を見つけたって」
購入した本を取り出し、弟に見せる。
「その子が言ったまっさらな本ってこれ」
「わかんない、聞いてみないとわからない」
「お願い、聞いてきて。進、もう一つ、この本には文章が書かれている」
日は沈み、空は青黒く染まりぬ。
「本の結末はどうなっている」
「●●が××~~」
結末を聞かせないつもりですか。はきはきした声ぞ響く。
「ありがとう」
靴を脱ぎ、二階にある自室へ入ると、犬と猫が仲良くベッドに座りたり。
「英子」犬がしゃべる。
「えいこ」猫が言う。
<語句説明>
ひぶなも逃げる白蛇の坂……ひぶな坂、蛇のような坂、下りは良いが登りは面倒。車の運転時、坂は注意しよう。途中にあるお菓子のお店、六花亭春採店からきれいな景色が見える。
青と黒と橙の石炭列車……石炭を運ぶ列車がある。絵になるよ。
捜索願……誘拐事件や行方不明ではよく聞く言葉だけど、実際に自分の親類がそうなった場合、警察にきちんと通報しよう。
真っ白な本……文庫型メモ帳とは違う。アマゾンで取り扱っていた。
たり……古典文法で「完了・存続」を意味。ラ変以外の動詞につく。