風邪を引いた須田愛良と刺された大和
おはようございます、今日もよろしくお願いします
翌朝、空は灰、しずくが地面に落ち、アスファルトは炭、傘をさして学校に向かえば、
「愛良、今日は休みかしら」
「そうみたい」
(この子は誰)
髪の毛は短くツンツン、瞳は細く、頬はほんのり赤く、もちもちとした肌の少女。
「どうしたの、英子」
「あ、いや、なんでも」
大和はふうっとため息をはき、広はゲームの話を彼とする。
「英子、知ってる。愛良ね、好きな男の子がいるんだって」
隣の青年は友と話をし、笑うものの、目はこちらに向けたり。
名前も知らぬ女に対し、どういうべきなりか。
・知っているよ
・知らない、教えて
決断――。
「知らない、教えて」
青年に聞こえるよう、大きな声を上げれば、
「愛良の好きな子はね、耳を貸して、英子。そこにいる大和なんだって」
「あ、そう」
「え、驚かないの」
強く降りぬ雨。
「愛良、あいつのことになったらムキになるもの。気づかないほうがおかしいでしょ」
「なーんだ、英子も気づいていたか」
ふと、張井英子として「中学生」時代を思い出しぬ。
友達は黒く焼けた肌の女の子、今思えば外国人と日本人のハーフかもしれない。
「あいつ嫌いだよね、気に入らないよね」な話ばかりなり。かわいいという話もしたけれど、
「●●娘の踊りみた、あのやる気ない踊り、だらしないよね」いちゃもんをつけばかりだった。
「英子、どうしたの、一人で笑って」
「あ、いや、なんでもない」
恋の話をする、芸能人ならよくしたけれど、友達に関する恋話は一度もしておらず。
「私は年を取ったのね」
「ど、どうしたの、英子」
雨は小降りになりぬ。
「あ、なんでもない。昨日、お父さんとシンジラレインダナを見ていて」
チャイムがなれば、
「ああ、もう1時間目が始まるの。早い」
「うん、そ、そうだね」
彼女は手を振り、前の席へ向かいぬ。
「あの子は保科由美っていうんだよ、英ちゃん」
小声で広が伝えれば、
「ありがとう、広」
ホームルームが始まる。須田愛良は風邪をひいて休みなり。
(小説によれば、愛良は風邪でなく別の病気らしい。問題は明日谷大和が浮気して刺されるそうだけど、今のこいつにその心は働かないよね、たぶん)
大和は刺されず、帰宅して自室に入り、テレビ画面に触れれど、変化はなし。夕食になり、テレビをつければ、ある男性芸能人が浮気したとばれ、記者会見を開きぬ。
「浮気の原因は妻に女としての魅力を感じなくなったからだな」
父が納豆をかき混ぜる。
「でも浮気する奴は最低でしょ」
進は肉をほおばり、
「当人にはわからないんだ。自分がやっている行為が悪だとわからない。わかっても自分だけは特別だから、まあいいやと思ってしまう。進は恋人、いるのか。お前、モテるだろ」
「い、いない」
じろりと目線が合えば、
「英子、お前に彼氏がいてもいいけれど、浮かれるな。女は大きな目標より、その場の感情を優先する生き物だ。浮かれると、熱が冷めるまで些細なことは気にしなくなる。それでできちゃった結婚して悔やむ人をいくら見たことか」
「熱しやすいのは女だけじゃないでしょ、お父さん」
母がお味噌汁の具を食べる。
「アンアン」
「ほら、ロロナもそうだと言っているわ」
ナツリはむしゃむしゃご飯を食べている。
夕ご飯を食べ終え、部屋に戻ると、画面から血が流れる。
「な」
「アンアンアン」
血の先を見ると、明日谷大和なり。真っ白い顔を浮かべた怪物、大和の心臓にナイフを刺しぬ。
「大和がこちらを向いている。えいこ」
「わかっている。浮気したから、浮気相手にでも刺されたのね」
心臓が音を立てて笑いたり。
「えいこ、怖い」
ナツリの一言に悪魔の心、消え失せぬ。
「大和は死んでいないよね、ナツリ」
「わからない」
進が来れば、
「姉ちゃん、ど、どうしたの、ち、血」
「進、今からあの男を助けに行ってくる」
画面に触れ、向こうの世界へ入りぬ。
当初、抱いていた張井英子の姿がどんどんかい離しています。
初めは良い子だったはずなのに、どんどん悪い部分を出している。
人間はこんなもの。
時事として、米国大統領選挙が終わった後、
「平和・人類愛」を叫ぶ人たちが己を振り返らずに暴動を繰り広げています。
一部は「どこかの手先」が動かしているのでしょうけれど、
動かされている時点で、人が持つ「良い、悪い、情けない、美しい……」
いろんな仮面が透けて見えますね。