武彦が抱く母の姿
おはようございます、いつもお読みいただきありがとうございます
公園に子はなく、ぴゅるっと温かい風に誘われて散る桜の花びら、ベンチに腰を掛け、
「広、あの場に武彦がいたの」
尋ねれば
「おそらく、化け物から逃げている時、強い風が吹いて、それぞれ別の場所にとbされた」
目の前に散る花びらが落ちぬ。
「私はバカな人間だ」
「え、英ちゃん」
中学生に述べても、苦しみは上辺しかわからぬ。いや、述べるべきなりか。
「広、私は別の世界、いや、現実の世界から漫画の世界にやってきた。私は息子を助けるために来た。なのに私は小野田英子として学校生活になじむと、少しだけ武彦を忘れていた。息子が今、苦しんでいると思うと、気が気でならないのに、私は逃げるように忘れる」
空は青く、雲はなし。
「向こうで武彦君が言っていたよ。ママが怖いって」
「私が怖い」
声を一段階上げれば、
「俺が英ちゃんの話をすると、ママが怖いと言って、頭が真っ白になっていたよ。なんというか、考えられないというか。俺、英ちゃんと話しているからあまり疑いたくはないんだけど、英ちゃん、武彦君に暴力をふるっていた。ほら、ドメスティックバイオレンス(DV)ってやつ」
(私が、息子にそんなこと、していない。頭を叩いたことはほとんどないし、武彦が悪いことを下から、頭を叩いた)
顔を彼より背け、地に落とす。
「俺も英ちゃん、いや、張井さんでいいんだよね」
「うん」
「張井さんがDVをやっているなんて、信じたくないけれどさ」
(私はやっていない)
「武彦が、そういっていたんだよね」
「いや、DVといったのは俺。そう思っただけ。ママに殺されるって、英ちゃんが知らない間に、武彦君は英ちゃんが包丁をもっと殺しに来ているところでも、見ているのかなと思った」
夕日が微笑み、影が伸びる。
「ごめん、言いすぎた」
「遠慮がないね、広」
「う、うん。ごめん。張井さんには遠慮したらだめだと思った。小野田の英ちゃんなら言わないけれど」
立ち上がり、手を振る。
「そろそろ日が沈んで暗くなるから、帰りましょ。広、ありがとう。武彦と話をしてくれて」
「俺のカンだと、武彦君は死んでいないよ。絶対に」
彼は手を振る。張井英子は自分に告げた。
私は武彦を殴ったことはほとんどない。殴ったといっても、あまりにも言うことを聞かないから、頭を叩いたことはある。口できちんと叱った。あまりにもいうことを聞かない、逆らうときは激しくしかった。武彦はだまって地面をうつむき、泣くこともあった。おじいちゃんやおばあちゃんにも叱られている。でも武彦はおじいちゃん、おばあちゃんにちゃんとなついている。私の教育方法は正しいのか、間違っているのか。わからない。もしかすると間違っているのかもしれない。もっと優しく言うべきだったのかもしれない。でも、叱るときはあのやり方しかない。子供が悪いことをしたら、どう叱ればよいのだろう。叱るところしか記憶にないと、私を怖いと思うのも無理はないか。
家に帰れば、たたたっと走るロロナ、ゆっくり歩くナツリがお出迎え。
「えいこ、新しいページができた」
急いで登り、テーブルにおいてある小説を読めば
「須田愛良が風邪を引いた。明日谷大和は同じく風邪を引いた明日谷由良に呼ばれ、とうとう寝込んでしまった。ただの病気ではない。須田愛良も原因不明の病気にかかっていた。周りは単なる風邪としか思っていない。
愛良が眠りにつくと気色がおかしくなった。英子は一人で向こうの世界へ足を運ぶ。向こうの世界で、明日谷大和は明日谷由良と楽しんでいた。この浮気野郎と思った。すると大和が見えない何かに刺され、視界が真っ暗に染まり、目の前に明日谷大和がいた。彼は目を閉じていた。頬を叩いて起こすと、英子は言った。この――」
(大和が浮気、まだ須田愛良とも付き合っていないのに)
英子の独白、あまりないので書きました。
私は男ですから、女性の気持ちにはどうしてもフィルターがかかってしまいます。
ひとつの見方だと思ってお読みください。