表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あおい夢~キラメキDaughters~  作者: 千賢光太郎
25/44

英子が見た「怪物」

おはようございます、お読みいただきありがとうございます

「ナツリたちに声が響かないの」


鏡の向こうより、息子を守る青年、睨む猫。こちらでは武器として握る木製バッド、タンスの中にあり。振って、怪物を数匹追い払う。


「どうしよう、このままじゃ武彦が、武彦が」

「ナツリに広君もいるよ、英子。怪物が後ろに」


犬に謝りつつ、後ろを向けば、5メートル先に奴がおり、ひたひた歩く。


「こっちに来ないで」

「何これ」


か弱き声を聞こゆ。


「愛良の声だ」

「英子、こっちに扉があるよ」


勢い良く開ければ、天井より友の声ぞ聞こゆ。パジャマを着た女が氷につけられている。周りにうろつく赤紫の綿ども、蠢いて壁を食いぬ。


「愛良の声が天井から大きく響く、一体どうなっているの、この部屋、この空間は」

「英子、何かがまとわりついているの、あっちいけっての、アンアンイヤーン」


体を横に揺らすロロナ、腰に脚に胸に首に髪の毛にまとわりつく、じゅめりと伝わる何か。


「英子、あの子がどんどん見えなくなるの」

「くう、広やナツリもどうなっているかわからないし、こいつは気持ち悪いし」


手を振ればドアノブに触れた。


「ロロナ、いる、ドアを開けるよ」


扉を開けて、湿気を含む部屋に入れば、


「わーん、こっちはこっちで不快なの」


椅子があり、蠢く生き物もいないので座る。


「座ってはいけない」


立ち上がるが、また座る。


「英子、落ち着くの」

「わかっている。広もナツリも、武彦を考えると落ち着いていられなくて」


また立ち上がる。


「ナツリが死んだらロロナも死ぬの。だからナツリは無事。おそらく男の子も」


座り、左手で右手を覆い、息を手に吹きかける。


「ロロナ、これは夢だと思う、現実だと思う」

「夢だと思う」


前足を上げたので、犬をつかみ抱きしめる。


「現実ならロロナは英子と話ができない」


思わず笑みがこぼれ、立ち上がる。


「これは夢だよね」


天井より響く友達の声。


「この世界も夢、夢なら怖くない」


犬を強く抱きしめつつ、あたりを探せばテレビあり。スイッチを押せば、


「大丈夫か、ナツリ、武彦君」

「うん、お兄ちゃんは」


武彦という言葉に身を揺らせば、部屋の湿気が空の彼方に吹っ飛び、乾いた熱気がやってくる。


「何かが来る。英子とにおいが同じ」

「私と。それって小野田英子ちゃんかしら」


ドアが勝手に開く。目は右のみ、赤黒く、顔は辞書、表紙に「張井英子」の文字、右手には包丁、青色の長袖とロングスカート、背丈は小野田英子の顔1つ分高く、脚から紫色のウジ虫が湧き出る。


「英子、怖いよ、英子」

「く、来るな」


バットを強く握り、構えると、奴も同じく包丁を構え、じりじりと間合いを詰める。包丁を振り上げた。思わずかがんでしまった。左腕に切っ先があたり、血が流れる。


「英子」

「ロロナ、逃げ道を探して、早く」


バットで奴の胸を軽くつけば、よろける。さびたにおい、数息吐く息白い息、何も考えられぬ。


「ハッピーきらりん♪ なるりんロード、イエイ!」


キラメキドーターズの明るき声が天井より響くと、のしのし歩き逃げる怪物、包丁を床に突き刺すと、強い風が吹いて、みごと吹っ飛ばされぬ。

次回はどうなることやら……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ