冷たい扉とうずくまる少年
おはようございます、いつもお読みいただきありがとうございます
開けたら、部屋は寒く非ず。
「広、武彦君」
「この子が、武彦君か、英ちゃん、武彦君を見つけたよ、英ちゃん」
鏡の向こうを見ようとしても、ただの鏡になりぬ。
「通じていないのか、英ちゃん、まさか」
「大丈夫、死んだら私も死んでいる」
「どうして」
「あちらにいる犬、ロロナと私は魂が一つ。ロロナは死んでいない。部屋を移動すれば見えるはず」
部屋は闇、扇風機らしき機械がごうんごうんこと音を立て、何かを回している。
「どこに行けば、暗い部屋から出られるんだ」
「わからない。ただ、私には暗く見えない。あと少し歩くと壁、右に曲がって」
命のない須田愛良を抱きかかえ、あたりを見渡せば、6畳の部屋があり。
「誰かが寝ている」
顔を見れば、少し肌が黒く、髪の毛は短くツンツン、音は一切なく、腹部は少し膨らんだかと思うと引っ込み、
「生きているようだ」
「大丈夫、息はしている」
「ナツリ、この子を起こした方がいいのかな」
すう、すう。の音のみ聞こゆ。
・起こしてみる
・そのままにしておく
決断――
「起きて」
優しい声をかければ、目を開けた少年、目はふるふる、口はぷるぷる、体はぶるぶる、こんにゃくぜりぃのごとく震えたり。
「あ、僕らは君に危害を加えない」
「そう」
「ひい、怪物がどうしてここに」
起こさないほうがよかっただろうか。
「ねえ、落ち着いて、あなたに危害を加えないから」
「ほ、本当」
二人、一人と一匹はうなずく。
「じゃ、じゃあ、一つ聞いていい。どうしてそちらは人形を抱きかかえているの」
「人形」
おんぶされている須田愛良、気はあり血の巡りもよし。
「君から見て、この子は人形なのかい」
「うん、肌の色がなんか違うんだもん」
須田愛良を近くにおろし、あぐらをかけば、
「俺の名前は風間広、この猫はナツリ、君は」
「た、武彦」
「武彦、英ちゃんの息子か」
彼の歯が不気味に揺れれば、地も揺れる。
「地震か」
「嫌だ、やめて、僕を殺しに来ないで、何度僕は殺されれば気が済むの」
猫は入ってきた扉に目をやり、激しくにらむ。心はしぼみ、冷や汗をかきぬ。
「何かが来る、うわわわわあわ」
何者か、扉を強く叩く。
「武彦君、俺の後ろに隠れるんだ」
ガン。
前話の答え
A-4 B-2 C-1 D-3
春・夏・秋・冬の印象と連想してみてね。
次回は英子に視点を戻します。