魂の抜けた須田愛良とナツリ
いつもお読みいただきありがとうございます。
男は雪岡中学校2年生、声変りに少し驚き、頬ににきび、肌はまだ明るく、唇はたらこ、数か月前、好きな女に告白せしが、見事散る。扉を開けると、一人の少女と猫が目を閉じて座りぬ。
「あ、愛良ちゃんに猫だ」
「愛良だって」
鏡の向こう側にいる女が叫ぶ。
「愛良ちゃん、愛良ちゃん、猫、猫」
叩けば猫のみ起きる。
「英ちゃん、猫が起きたよ」
「ナツリ、ナツリ」
向こうより甘く甲高い声が聞こえれば、
「ロロナ、ここはどこなの。お、お兄さんは」
「猫が、しゃべるとは」
女が笑いぬ。
「英ちゃんは猫ちゃんと話ができるんだね」
「私も初めは驚いたけれど、今は当たり前になっている。ロロナ、ここはもう持たないわ。そっちも愛良を抱えて逃げて」
「逃げろと言われても、どこへ逃げたらいいものか」
猫は静かに走り、扉の前に泊まりぬ。
「あなた、名前は」
「俺、風間広だけど、猫ちゃんはナツリでいいんだっけ」
うなずき、自分の手をぺろぺろなめれば、
「ひろし、ここに何を書いている、読める」
「ちょっと待ってくれ。うん、これを読まないと開けられないみたいだ。
A 花が咲き、死者は肉体を経て黄泉がえり
B 生き生きと 野山の歌声を聞き
C 寒さに備え 子を地面に落として殺せば
D おどろおどろ 風と雪の張り裂ける声
1 紅葉を拾い ドングリを集めて遊ぶしょうたくん
2 カブトムシを捕まえ、クワガタと戦わせるゆきくん
3 滑り台、だるま、小さな家を作るなつじろうくん
4 上を見上げると桜吹雪、片手にジュースを持つたかひろくん
5 勉強して宿題を片付けるあかりくん
A-
B-
C-
D-
E-
何が言いたいんだろうね」
ドンドン、もう一つの世界で扉を叩く音を聞こゆ。こちらにも同じくドンドン叩く音あり。
「早く開けないと、えいこにロロナが殺される。私たちも」
「わかった、ちょっとせかさないでくれ。要は当てはめればいいんだな。
(回答は後日)どうだ」
扉が開けば、恋心を抱いた女をおんぶし、ゆるりと歩く。怪物が一匹、二匹、三匹と入りぬ。
(胸が背中に当たるけれど、重たいな)
扉を急いで閉めると、向こうで様々な音を立てど、扉をえ開けず。ギシイ、ギシイ。歩くたびにわざとらしく悲鳴を上げる床、おほう、おほうと息を漏らす人非ざる者の声、見覚えなき廊下を歩き、階段を下れば、二つの扉があり。右は赤く左は青い。
(一体何がどうなっているんだか。ホラーゲームの世界みたいだ)
「ひろし、右の扉は温かい、左の扉は冷たい」
猫は扉に触れて、顔を向ける。どちらを開けるか。
・右の温かい扉
・左の冷たい扉
決断――
俺は温かい方が嫌いだから、冷たい扉を開ける」
この次はどうなるか、私も分かっていません、だから楽しい。