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あおい夢~キラメキDaughters~  作者: 千賢光太郎
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かっこいい男の子と好きじゃないひ弱男

おはようございます。

お待たせして申し訳ございません。


今日から英子にとって「人生」を分ける男の子が出ます。

「姉ちゃん、姉ちゃん」

「アンアン、大丈夫、英子」

「えいこ、えいこ」


英子が家なり。


「ココアは」

「ココアって、さっきテレビ画面のモニターにいた、きれいな女性の人」

「モニター、そうか、私はあっちの世界にいったのか。そうだ、英子は、小野田英子は」


心臓を叩くと、進はちろあろころと視線を変え、


「数分だけど、話をしたよ、姉ちゃんと。やっぱり姉ちゃんと、今、話をしている姉ちゃんは何かが違う。あんたは、俺の姉ちゃんじゃないんだよね」


空は闇に染まり、星がぽたりと落ちぬ。


「ええ。進、あなたのお姉さんはどのような人なの」

「ちょっと性格がきつい人。たぶんだよ、だ、誰かをいじめてもおかしくないと思う」


ぺたぺた膝を叩くナツリ、舌を出して、輝く瞳を向ければ。


「アンアン、英子、文字、文字」


本を手に取り、


「英子がアルムの世界から帰ってきて、3日過ぎた。特に情報もなく、イラつくばかりだった。武彦を助けにいきたい。しかし助けるためにはアルムの世界へ行かなければならない。夜、いつもテレビの前に座って、月から虹が出るのを待っていたけれど、気配がない。


4日目、明日谷大和がひどく落ち込んで、友人の風間広に挨拶をした。英子の友達、須田愛良は坊主頭の男子学生と話をしている。男子を見たとき、英子の心が揺れた。


『かっこいい』


愛良は英子に紹介した。私のいとこ、大野大二郎よ。大二郎は強く引き締まった瞳、太い眉、細い鼻、身長も高く引き締まった肉体、英子を見て彼は、はじめましてといった。英子の心が揺れた」


心に少しの乱れ、びゅううと風が強く吹き、


「かっこいいと思うのは自然だけど、ま、まさか、ね」

「どうしたんだよ、姉ちゃん。俺にも読ませてよ」


進が読めば、


「姉ちゃん、大二郎って人と付き合うの」

「わからないよ。大二郎って人も、付き合うことも。私には息子、武彦が一番大切なのよ」


じろじろ体を見られ、


「いいんじゃないの。ちょっと寂しい気もするけれど」

「だから付き合うっていってないでしょ。それに付き合うのは私でなく、小野田英子」


4日後、少し温かな気を感じて学校にたどり着くと、どんより沈んだ顔の明日谷大和に、あちこち花を咲かせる須田愛良が、背が高く強く引き締まった瞳の坊主青年と話している。坊主のてっぺんから太陽光が反射し、思わず顔を背ければ、


「英子、おはよう」

「愛良、どうしたの、浮かれすぎて。彼氏ができたの」


ちらりと背の高い男性に、どくんと心が揺れる。


「彼氏じゃないよ。俺、須郷大二郎っていうんだ。愛良のいとこなんだ、よろしく」


白い歯に光る頭を見せて笑顔を作る彼、第二ボタンに光が当たる。


「どうしたの。英子」

「いや、なんでもない」


教室に入り椅子に座れば、口を開けて遠目を見つめる大和をり。


(やばい、心臓がやばい。私があんな子に惚れたというの。夫と初めて出会ったときもあんな感じだった。もしかして、私でなく、小野田英子が惚れているの。どちらだろう。小野田英子が惚れているなら、張井英子として彼女のためにひと肌脱いでやりますか。体を借りているし、焦っている彼女にきつくいってしまったし。いや、武彦を探すのが先決。須郷大二郎と付き合う決断は小野田英子にさせるべき。どちらがいいのだろう)


決断――


・張井英子として告白

・小野田英子に任せる

・そんなこと気にしている暇ではない


英子は決めた――。


「かっこいいね、君」


つい口から出た言葉、一度出せば感情の揺れ動く様に沿って進む。


「かっこいって、ありがとう。俺、よく言われるんだ」

「大二郎は小学校から女の子に誘われたんだよ。今もいるんだっけ」

「うん、でも野球で全国大会を目指しているから、今はそっちに集中している暇じゃない」


昨日まで雨で濡れた雑草を後目に咲きたる花びら、今は雲無き晴れ間が一面に広がり。光が背中にあたり、じわりと熱い。


「そう、頑張るのよ」

「ありがとう、小野田さん」


大二郎は両こぶしを握り、まっすぐな姿勢で手を振って教室に入る。


「ぽえぽえ7が楽しみ、英子は行く」

「いや、私はやることがあるからいい」


首を横にふれば、明日谷大和と目があう。顔は白く、目より見えるわずかな光、ぼそぼそ動く唇に気持ち悪さを抱きぬ。


「大和、ぽえぽえ7のライブ、当日券があるかもしれないよ。そこに望みをかけようや」

「う、うん」


鼻から笑みぞこぼれたる。愛良が広とぽえぽえ7話で盛り上がれば、彼の影よりぼこぼこと音が鳴り何かが生まれ、靴にしがみ、つるつるとふともも、へその中、払いのけてもぬめり、手の中に入り、体が重たくなれば、


「英子、どうしたの」

「い、いや、いや、何でもない」


大和よりもれる小さな怪物の影に、みなは見えず。


(なんで私だけ味わっているの、この辛さ)


「きゃ」


空が怪しく光り、消えたかと思うと、心臓をがきんこきんと鳴らす音が響き、あるものは悲鳴を、またある者は笑い、己が体を見れば、異業物が悲鳴を上げて逃げぬ。


「すっごい雷、数分前まで晴天だったのに、いつの間にか空が真っ黒になっている」


愛良が驚き、抱き着けば、大和の瞳がまばゆく光り、目を閉じぬ。電話音が鳴る。


「胸ポケットに携帯電話、私、携帯電話をもっていたのかしら」


誰やと覚え、電話をかけると、


「な、ナツリ」

「えいこ、聞こえる。あなたのすぐそばにいる明日谷大和君がピンチなの」


ありがとうございます。次回は――

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