いざ、アルムの夢世界へ
いつもお読みいただきありがとうございます。
今日は「本来、呼ばれてもいない人間」がアルムの世界へ向かいます。
本来の物語に出る主人公、明日谷大和君はアルムの世界にいるアスナに呼ばれ、
何事もなく過ごすことができますが……
夜になり月が現れテレビは真っ暗、電灯をつけてロロナとナツリに進が後ろに座ると、虹が現れる。
「姉ちゃん、月から虹が現れた」
「アルムの世界へ帰れるよ、ナツリにロロナ」
「うん、私たちも」
ナツリとロロナはただ、テレビを片足でたたくのみ。
「あれ、いけないの」
「どうして、どういうこと」
とんとん。
「姉ちゃん、姉ちゃん」
「どうしたの、進、肩なんか叩いて」
青ざめた表情を浮かべ、耳に響くほどの息を吐く弟。
「姉ちゃんがテレビに触ったとき、ぐったりと倒れたんだ。慌てて起こしたよ」
「私、気絶していたのかしら。全くわからなかった」
テレビ画面を見るとアニメが始まる。画面の向こうに明日谷大和をはじめとし、見知らぬ女たちが罵りあいたり。
「進、画面に触れてみて」
何度も画面に触れど、
「姉ちゃん、なんも起きないよ」
「私だけしか入れないのね」
「気を付けて、えいこ」
ナツリは抱き着き、英子とともに画面を触る。きらやかな光に目を覆えば、
「……これがアルム! 温かい」
隣にロロナ、ナツリ、進はおらず。見渡せば一面緑色のふわふわな草原、赤色の空、青色の山、お菓子でできた家、クレヨンで描いた飛行機、ぬいぐるみに乗った女の子、歩けば軽やかな体、生き物の鶴や折り紙の鶴がともに飛びぬ。
「きゃあ!」
「何、今のは?」
英子が向かうと、須田愛良がファンタジーな衣装に包まれ、床に転がりぬ。
「大丈夫、愛良!」
友を見れば、お鼻はなく目は大きく輝き、お肌の印影もくっきり。
(人間の顔に見えない)
「……助けていただき、ありがとうございます」
「あなたは、須田愛良?」
愛良は首を横に振り、胸に手を当て、微笑む。
「――違います、私はキラココア。ココアと呼んでください。変身する前は愛良と呼ばれていますが、須田愛良ではありません。紫色の影さん、あなたは?」
「小野田英子。紫色?」
ココアはぱちぱちとまばたきをしなさる。
「すみません。もう一度お願いできますか? 紫色だけは聞こえたのですが……」
「小野田英子って言ったの」
「あなたがきちんとおっしゃっているのに、名前だけは聞こえないのです。って言ったの、だけは聞こえましたが」
紫の空、桃に染まり、得体のしれぬ化け物が来たり。
「あれは何?」
「クスミと呼ばれるものでして、この世界に現れたから、私は浄化しますの」
ココアは鳴子を化け物にびりっと向け、微笑み、お歌を敵にささげる。心が溶けそうな声に、英子の瞳から涙が落ちた。化け物は白い泡に変わり、消えた。
「ありがとうございます。紫の影さん」
「紫の影か、あなたの目から見て、私は紫色の影にしか見えないの?」
英子が尋ねると、うなずきなさった。あわあ、声が聞こえて顔を向けると、川の向こうに武彦がいた。
「武彦」
「ひい」
彼は逃げた。
「待って、武彦、私よ、お母さんよ」
「ひいいいいい」
川を渡れば、霧が濃くなり。
「どうして逃げるの……そうか、今の私は人間じゃないのか」
英子は自分の手を見る。真っ白く細い指、ぶっつりきれている生命線。ココアから見ると、私は紫色の影、いや、怪物――。
「誰かあそこにいらっしゃるのですか、英子?」
「私の、私の息子がいるの」
目の前が見えぬほどの白、灰、紫に景色が変わった。英子の脳より響く自責の念、罵倒するほど不思議な快楽も混ざる。
ガサガサガサ――。
アルムの世界では「! ? ―― ……」といった表記を用いています。