誰が息子を連れ去ったのか
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ID @megabi0
向こうで広が叫べば、
「他にもこの霧に覆われている人がいるんだね。大丈夫だろうか」
「大丈夫だと思います、たぶん」
煙が少しずつ晴れ、紫色の影も薄くなりぬ。
「お嬢さん、どこにいますか」
「ここですよ、あなたもどこに」
「私は」
声がつゆも聞こえず。代わりに現れる広、画面の向こうにて、ナデシコとアスナが無事、木の怒りを鎮めになりぬ。
「とれたねえ♪ シリウスイチゴ、さ、ナデシコ、熊さんたちに作ってもらいましょ」
「う、うん、アスナ、私はあいつらがちょっと苦手。勝手に胸や足、太ももを触ってくるし」
「気にしない、しな~い♪」
晴れ渡るお声、響く叫び。
「怖いよう、おばあちゃん、おじいちゃん。お姉ちゃん、助けて」
「武彦、どこにいるの」
ナデシコのすぐそばに武彦あり、袖を引っ張れど、お答えしない。
「助けて、嫌だ、あっちいって、ごめんなさい」
青色の怪物、武彦の手を握りて連れ去りぬ。画面が消え、ただの風景に戻る。
「今、子供の声が聞こえ」
「た、武彦」
「え、英ちゃん」
足に力が入らず、化け物を食い止めるために痛めた手、心にもじんじんと来たり。
(英ちゃんについている人はあの子の母親か。あの怪物は、霧はいったいどこから。大和が女に化けていた。いや、あれは大和なのか。大和にそっくりだけど、あそこに入っていた画面はアニメだ。目や鼻すじ、それにリアルな陰影もない。変身する前の声は大和だった気がするけれど、女の子に姿を変えたら声は違った。何が起きているんだ)
広は推測す。英子がゆっくり力を入れ、立ち上がる。
「広君、ありがとう」
「いや、いいよ。先ほどの声、もしかして英ちゃんの息子かい」
「そ、そう、あれが私の息子、そしてあの子を助けるために、気づいたらこの子についていた」
夕日が彼の顔に当たる。瞳はまぶしく、頬よりニキビがぶつぶつ見えたり。
「俺、何かできないか。いや、他人事と思ったら俺の心が苦しくて」
「お願い、武彦に関する情報があったら、息子を見たら私に伝えて、お願い。この状況をだれにも相談できないの」
「わかった、英ちゃん、何かあったら連絡してね。こっちもするから」
夕日が落ち、金星が微笑みだすころに帰宅すれば、
「姉ちゃん、友達が言っていた小説、姉ちゃんと同じものだって」
進がすぐに降り、ロロナにナツリもやってくる。
「よかったらあんたの友達に会いたいのだけど」
「言っておいたよ、明日会ってくれるって。その子さ、石井徹って言って、おっさんなんだ、姉ちゃん」
うなずけば、にゃあと鳴くナツリが近づき、
「えいこ、武彦君が見えた。何者かに連れ去られた」
「何者ってどんな奴」
ナツリは口を小さく開け、英子の脳に画を送る。
「ごめん、わからない。大人のおばさんだった。私が猫でなければ顔を描けるのに」
● 前話の答え
「辞」
stand→立つ 10→十 千→千 くち→口
後は並び替えておしまい。