紫色の物体はなんと
おはようございます、いつもお読みいただきありがとうございます。
どんどんわけのわからぬ方へ進んでいますが、どうなることやら。
「お嬢さん、こんなところで何をしているんだ」
人の形をせし紫色の何かが現れる。
「しゃべった」
「失礼な、私は人間だ」
影は頭を下げる。
「お嬢さんが何者かわからない。私は探している。部屋に閉じ込められた私の息子を」
「部屋に閉じ込められた息子って、何かあったのですか」
気品を覚ゆるおじさんの声、携帯電話を取り出して写真を見せる。3歳ほどのらうたき少年がバケツに乗ってピースサインを出している。
「この子は正行と言います。私は孝仁です。部屋で遊んでいたとき、ドアがいきなり人の唇に変わり、私と正行が食べられてしまったのです。正行を見ていませんか。食べられて、消化されたとは考えていません」
肩から脇、おへそに向けて力がこみあげる。
「すみません、出会っていません。私も息子が本に食べられて、探しているのです。武彦というのですが」
「英ちゃん、誰かと話をしているの」
近くから広の声が聞こえる。
「お嬢さん、そちらに誰かいらっしゃるのか」
「私の友達です。声はするけれど、どこにも姿が見えません」
「ふむ、近くにはいるのだな」
うなずけば、冷たく鬱屈した気が西より来たる。包丁を持ち、髪の毛は地に垂れ下がるほど、気色は灰、指は尖り、裸体なれど乳首に色なく、へそから小さき手が生えぬ。
「逃げよう」
化け物は指をさし、いっぽ、イッポ一歩と大股で歩く、逃げるといえども、どこに隠れればよいかわからぬが、適当に見つけて部屋に入れば、壁からびびびと音が鳴りて、アニメが始まる。明日谷大和君がキラナデシコにお姿を変えられ、渦を巻く木に向けて、もう一人の少女、キラアスナとお歌いになる。
「このアニメはいったい」
孝仁が尋ねても答えられず。
「英ちゃん、聞こえる」
胸ポケットより響く広の声、まさぐれば小さな鏡あり、覗けば広が青ざめた顔を浮かべ、4つのボタンに何かを書いた文字あり。
「英ちゃん、変な化け物に追われているんだけど、英ちゃんは大丈夫。壁から変なアニメも始まって怖いんだけど。後、ここに何を書いているかわかる」
あたりを見れば、文字が書いてある。
「広、読むよ。
4つの文字を変換し、意味のある単語に変えよ。
stand 10 千 くち
これだけしか書いていない」
ガンガンガガンと扉をたたき、ののしり、ぼやけたガラスより見える白と黒の顔を見れば、心が小さくしぼむ。
「わかった」