男のカンで動く風間広
おはようございます。今日もお読みいただきありがとうございます。
創作は忘却こそ天敵、人は忘れる生き物、斬新な情報は目を引けど、数日たてば慣れて当たり前、疑問を抱く者こそ本質を得て、険しき道を上ります。
捜索は断念こそ罪、はじめは重大な問題なれど、数日たてばあきらめの境地が勝り、希望をとられる。
「英ちゃん」
声をかける風間広、明日谷大和の友達だ。
「確か、広君だっけ」
「やっぱりおかしいね、英ちゃん」
瞳が固まり、かなたでホッチキスが複数の紙をはさむ音ぞ聞こゆ。
「おかしいとは」
「英ちゃんが俺の知っている小野田英子じゃないなって意味」
顔は動けず、耳穴は広がり、目はぱっちり。
「広君、あなたは小野田英子が好きなの」
「小学校以来からの付き合いだからね。好きと言われたら好きかな。恋愛はちょっと」
「いいのよ、別に」
失態に気づき、頭が乱れ、口が開いてしまう。
「英ちゃんは何かを隠している」
「私は小野田英子ではない。と言ったら、信じられる」
額より流れる汗、心臓を覆う恥、凝視される恐怖。
「信じるよ」
年下に心が揺れる。大人になれば顔は大したことでない。
「どうして」
「英ちゃん、いや、あなたが何者かわからないけれど、俺は昨日、怖い目にあった。帰宅してテレビをつけようとしたら、いきなりテレビが入り、魔法少女アニメが映っていた。雪だるまのようなやつが空に向かって息を吹きかけたら、あたりの景色が変わった」
ぴくりと小指が揺れ、白き煙が足元を覆う。
「いきなり部屋が凍ったとき、携帯電話から英ちゃんの声が聞こえた。なぜかわからない。おそらく英ちゃんもわかっていない。もしかしたらわかっているかもと思って、尋ねてみたんだ」
煙がいつの間にか、あたりを白く染める。
「この煙、おかしいね、え、英ちゃん」
煙は深き霧に変わり、男の姿をかき消す。
「広君、どこにいるの」
「ここだよ」
歩けど、誰もいない。手を動かせど、誰ともぶつからない。煙が消えたらあたりは紫、壁から聞こえるうめき声、ビビビと壁からモニターが映り、向こうに映る明日谷大和と知らぬ女の子、緑の髪型にうぐいすも驚く声、ピーターパンのようなワンピース。
「英ちゃん、聞こえる」
「うん、聞こえる」
ポケットに小さな鏡あり、そこより聞こえる広の声。
「大和たちがピンチみたいだ」
のそりと歩く音、紫に染まりし物体が近づく。