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プロローグ
それは一瞬の出来事だった。
いきなり宙に浮いたかと思えば、次の瞬間思い切り体を叩きつけられた。
車内には火が燃え広がっている。血の臭いやガソリンの臭いが辺りに充満していた。
少年は自分の身に何が起こったのか理解できなかった。ただ、痛くて、熱くて、自身の身体が動かないということだけが分かった。身体の上に何かが乗っかっていて、その下から抜け出ようとするも身体に力が入らなかった。
だんだんと息苦しくなり、赤く染まった視界は閉じようとしていた。
薄れゆく意識の中で、少年は声を聞いた。
『────君は、助かりたい?』
少年は、声のした方にわずかに顔を向けた。
少年の眼前には光があった。
「······たす、け、て······」
少年は光に手を伸ばした。それが運命の始まりとも知らずに。