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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

好きで、好きで、好きだから

作者: ナガレ 真

*BL注意!

意味がわからない方、苦手な方は読まないでください。

振り返ったらぎこちなくなった。



最初に雷牙にあったのは10にも満たない時で、バカな奴なんだろうという印象を持った。

ただ、きっと憎めない奴なんだろうなとも思った。自分にはできない顔で笑ってたから。


何かの拍子につるむようになって、実は思ったより考えている奴なんだってことを知って。

やっぱり憎めない奴だったから、取りこぼしたものをフォローしてやったりした。

雷牙の視線が変化したのも、親友と呼ぶような関係になったからかと思っていた。


付き合いが8年にもなるかって時に告白された。お互い男だってのに。何時童貞を卒業したかも知っているのに。

ただ、まったく嫌悪感は無くて、じゃあ抱かれようか?って聞いたら泣きそうに笑った。余り好きな顔じゃなかった。


雷牙の視線が前にも増して熱くなった。

まるで洗脳されるかのように、好きだという言葉を考えるようになった。

実は、人を好きになるとはどういうことなのか、いまいちわかっていない。


告白から半年後、酔った勢いで抱かれた。まぁまぁよかった。

起きた途端に土下座されたけど。別に嫌じゃなかったって言ったら複雑そうな顔をした。仕方ないだろう。


自分が性に奔放なつもりはないけれど、抱かれたことで雰囲気が多少変わったらしい。

その手の誘いを受けるようになった。やんわりと断るんだが、強引な奴にちょっと困っているところを見られた。

怒り狂ったように引き離されて部屋に連れ込まれて、ああ誤解したんだなとわかった。

傷はつかなかったけど、翌日だるかった。でも雷牙に対する怒りは湧かなかった。

少し悲しかったかもしれない。


それからはちょいちょい抱かれるようになった。月に2、3回程度。

じっくり時間をかけて抱かれることもあれば、泣きそうな顔で好きだと囁かれることもある。

その顔を見るたび、変な気分になる。その気分を分析する余裕はないけれど。でもいい気分ではないのは間違いない。


ある時、偶然外で雷牙を見かけた。

そう言えば一緒に出かけることも少なくなったなと思いつつ、声をかける前に他の人影に気付いた。

女と、男。友人のようだ。

男の方が何かを言って、それに笑いながら雷牙が返す。

雷牙がスマホをいじって女に見せて、女がむくれたようなふりをしながら雷牙の腕をたたく。


――――あんな顔で笑うんだった。

―――――――――――気安く触るな。


気付いたことに愕然として、思ったことが信じられなかった。

自分の血の気がひいたことがわかり、身体が固まってしまう。

そうしたら、余りにも凝視しすぎたらしい。雷牙が顔を上げて目があった。

反射的に逃げ出していた。


追いかけてきた雷牙を締め出して、部屋の真ん中に座りこんで考える。

2晩考えに考えて、結論を出した。

俺は雷牙を好きなんだ。独占欲を持つぐらいには。


それをそのまま雷牙に伝えたら、初めて見るぐらいぽかんとした顔をして、5分ほどして繰り返し確認をとり、10回確認したところで首まで赤く染めた。

ちょっと可愛いと思った。

その日抱かれた時は、気持ち良すぎて意識が飛んだ。


好きな奴に抱かれると、あそこまで気持ちがいいとは思わなかった。

もし普通に女を好きになって、好かれて、抱き合ったら、実はもっと気持ちよかったのかもしれないと思った。多分雷牙が初恋だからわからないけれど。

会える日は鼻歌が出そうなくらいふわふわしたし、キスをされれば力が抜ける。抱きしめられればうっとりするし、好きだと言われればそれだけで気持ちがいい。

抱かれる最中に言われれば、それはもう溶けそうな心地だった。

だから最初は気付かなかった。


しばらくして、気付く。

――――言わせてもらえない。

好きだと伝えてもらうのがとても嬉しいから、俺も返そうと思うのに、言おうとするとさえぎられる。

日中、そんなに言うことでもないけれど、冗談混じりでも言ったら、困ったような顔。

夜、肌が泡立って、電気が走って、溢れだすほどの思いを伝えようとすれば口づけ。

せめてもと抱きつこうとしても、指をからまされてベッドに縫いとめられる。


雷牙は、俺が好きだと言うのも、示すのも求めていない。


頭に血が上った。ならばなぜ、好きだなどと言ったのか。

自分が勝手に好きでいたいだけならば、俺に言ってくるべきではなかった。


上った血は、涙腺を破壊したらしい。

止まることなど知らないかのように、あとからあとから涙が出てくる。

事後に、水を取りに行った雷牙が、俺の顔を見て慌てて戻ってくる。


「どうした!?何か嫌だったか?具合でも悪かったのか?」

「・・・・お前はひどい男だ。」

「え!?」

「俺に振り返ってほしくなかったのなら、せめて最初にそう言ってくれればよかった。そう言ってくれてさえいれば、俺はお前を好きだと気付いても気付かせなかったのに。振り返った俺はお前の求める俺ではなくなるのなら、振り返ったことに気付かせないまま共にいたのに。振り返った後にそれに気付かせるなんて、お前はひどい。」


泣きながら詰れば、雷牙は驚愕を露わにした。


「そうじゃない!」


否定して、抱きしめられる。けれど、もう抱き返すのは怖くなっていた。ここで少しでも拒否が見えれば、この胸がつぶれるかもしれない。

苦しいぐらいに抱きしめられても、安心できない。


「ごめん。違うんだ。そうじゃない。そうじゃなくて・・・幸せすぎて。」

「・・・。」

「泣くなよ・・・いや、ごめんな。悪かった。まだ夢じゃないかと・・・まさか、同じ気持ちを返してもらえるなんて思ってなくて。都合のいい夢を見てるんじゃないかって。一番幸せになったところで目が覚めて、実は告白した直後で、お前から嫌悪の視線を向けられる日になるんじゃないかって思えて。」

「・・・・なんだそれ。」


ぐずぐずと鼻を鳴らしながらも、聞き捨てならないことを言われた気がして顔を上げる。

心底困った、情けない顔をした雷牙が見下ろしていた。

瞼に唇を寄せられる。


「俺、お前の事ホントに好きなんだよ。一目惚れかもしれない。まさかと思って女の子と付き合ったり、抱いたりしたこともあるけど、結局お前に似てるとこ探してるって気づいてやめた。ケリをつけてもらおうと思って告白しても、受け入れるような答えが返ってくるし。気持ちを知ってもらって、傍にいられるなんてよかったと思ってたのに、酔っ払ってお前の事抱いちゃうし。」


右、左と吸われ、涙の跡も優しく拭われ、それでも止まらないものをまた吸われる。


「今度こそ嫌われるかと思ったのに、それも許すし。俺が調子に乗って嫉妬しても、受け入れるし。お前に好きって言われて、あの時死んでもいいって思った。」

「やだ。」

「え?」


反射的に声が出た。でも、聞いていてなんとなく、不安に思わなくてもいいような気がしてきて、素直に言ってみる。


「・・死んだらいやだ。」

「―――~~~っっっ!ほんっとにさぁ!俺をこんなに好きにさせて、責任とれんの!?どんどん綺麗になるし、カワイイし、キスしたらふにゃって力抜いて、抱きしめたらうっとりして、抱いたら止まんなくなるぐらい色っぽくて、それを全部差し出してきちゃって・・・もし受け取った時に目が覚めて、全部夢だったりしたら、俺どーなんの!?もしも現実のお前に嫌悪の目で見られてみろ。俺犯罪者になるぞ!」


叫ぶように訴えられて、すごく安心した。背中に腕を回したら、倍ぐらいの力で抱き返された。


ああ、こいつは第一印象の通り、バカだったんだ。

*綾人(主人公)

結局名前が出なかった子。ちょっと感情の発露に乏しい。

そのため恋人に告白した際になかなか信じてもらえないという事態に。でも内心いろいろ考えているし、楽しんでいることも多い。

恋人が朝、自分が寝てると思って「アヤ」と呼ぶ練習をしていることも内心喜んでいて、いつ起きている時に言ってくれるのかと期待している人。



*雷牙

綾人に一目ぼれ。綾人は気づいてないが、仲良くなる機会を虎視眈々と狙ってた人。

まさか好きになってもらえるとは思っておらず、降ってわいたような幸福の日々に戸惑いを隠せなかった。それで誤解を招くと言うお馬鹿な子。

朝、夢ではないかと自分の頬をつねらずに済むようになる日は来るのか。

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