精霊について。
話をしよう。
と、言われても困ってしまうだろうが、少しだけお付き合いいただきたい。
この世界における八精霊の内、七精霊は、少しでも素質がある人間なら、相性の良い精霊と契約を交わしてその力を使うことが出来る。
土精霊ならば植物を操る、局地的な地震、地割れを起こす。
水精霊ならば水を出現させる、または水分を蒸発させる。
氷精霊ならば様々なものを凍らせる、氷柱で攻撃する。
火精霊ならば炎を起こす、温度を変化させる。
風精霊ならば強さの異なる風を吹かせる、風に乗って空を飛ぶ。
雷精霊ならば雷を発生させる、小さな電流を流して動きを封じる。
光精霊ならば光を点す、または相手の光を奪う。
最後の闇属性、闇の精霊だけは、素質があるだけでは契約することができない。
闇の精霊に選ばれなければならないのだ。
闇精霊たちもきまぐれだから、どうやって選んでいるのかは未だに分かっていない。
ただ、闇精霊に好かれ、契約した者は、モンスターに襲われにくいどころか、知能のあるモンスターを使役することもできる。
その他、今でも人形を操って使役するまでの魔術は知れ渡っているが、闇精霊の助けを借りると、そこから人形に命を吹き込んだりすることが出来るという。
それを応用したら、人間をも操ることが出来るだろう。
だから、闇精霊との契約者は恐れられる。
その力が強ければ強いほど。
その他にも闇精霊使いの逸話や伝説は各地に残っている。
何故、私がこんな話をしたか。
私が何故、犯人が闇の精霊使いだと思ったかということの説明のためだ。
それ以外の他意はない。
ちなみに私達十六夜班は、全員が闇精霊との契約者である。
…ライバルキャラが闇、とはなんとも分かりやすく出来ていると思う。
まぁ、闇精霊以外にも契約しているせいで、闇精霊との契約者であることは分かりにくくされているのだが。
「あら。今日は非番だったかしら?」
大和撫子な物腰で寮のロビーにいた私に近づいてきたのは、愛海の親友でありサポートキャラである咲。
彼女は月光班で、満さんの妹でもある。
「時間外労働をしたからその分午前中休めって言われて…」
「そうなの?…アクセサリー屋さんの泥棒はモンスターだったと聞いたけれど…」
「うん。闇の精霊使いに操られたモンスターだった。その犯人探しは上層部にも手を貸してもらうけどね」
というか沽券にも関わることだから、手は貸してくれるだろうけどね。
手柄に躍起になる上の立場はツライねぇ。