お仕事中。
最近、街ではモンスターによる強盗事件が増えているのだそうだ。
モンスターの中には知能の高いものもいるから可能性としては低くない。
ただ、金品を必要としないモンスターが宝石類も盗んでいるというのは少々気になる。
「…燎」
「棗。何か視えた?」
私に近づいてきたのは、十六夜班の一人であり、嵐の双子の妹、梓の姉である棗。
彼女は生まれた時から予知能力を持つ。
だから、予知能力を使って次の事件を予測してもらっていたのだが。
「…今日の夜、アクセサリー屋の倉庫に、来る。どうするの…?」
「店の人には近寄らないように警告をして…、属性も分からないから、私が行こうかな」
「…私も行く」
「一人で大丈夫だよ。予知を使った時はかなり疲労するんだから、大人しく休みなさい」
「…うん」
不満そうに、それでも頷いてくれた棗。
彼女は同い年だけど、小柄な身体もあって年下に見えてしまう。
だから過保護になるんだよなぁ…。
いや、それを言ったら十六夜班全員に甘いんだろうけど。
「燎っち~…って棗っちもいたんすね」
「薊、どうかした?」
独特の喋り方と親しい人にあだ名をつける彼女は薊。
こう見えても槍術の使い手。
彼女もまた、闇の精霊と契約する人間で、十六夜班。
「えっと…その~…」
「何か頼みごと?」
「玲夜さんに薬草の処理手伝って欲しいって言われて…、行っていいっすか?」
「別にいいよ。薊のことだから、自分の仕事は終わらせてるんでしょ」
「…い、一応…」
「だったら私にいちいち聞きにこなくても。
この班は割かし個人の判断にお任せなんだから。放任主義っての?」
「玲夜さんが許可とっておくようにって…」
遅くなってしまっても心配しないようにだろうな。
玲夜さんは昔から知ってるけど、私のことを妹のように可愛がってくれてたから。
「ま、玲夜さんらしいか。いいよ、お手伝い、行っておいで」
「行ってきまーす!」
上機嫌で走っていく薊。
お察しの通り、彼女は玲夜さん攻略時のライバルキャラ。
玲夜さんの好感度が上がりにくいこともあって、きちんと育てていれば勝てないことはなかった。
それに、彼女に勝った場合も展開がギャグっぽいし他よりあっさり諦めているから、後味が悪いルートではない。
攻略対象の性質に反して爽やかなルートなのだ。
だけど、今の薊が玲夜さんが好きであることは変わらないから、やっぱり手助けしたいと思う。