コクハク
転生前に作ってた料理も入ってるから、紅牙が見たことがないようなものも入ってたけど、紅牙は躊躇いなく食べてくれた。
「うん、コレ、すごく美味しいよ。燎は本当、料理が上手いよな」
…そりゃあ、薄れてはいるけど前世で培った経験があるし、こっちでも料理はするし、そんなことがあれば誰でも少しは上達すると思う。
「ありがとう。口に合ったみたいで良かった」
「ありえないとは思うけど、オレは燎の作った料理ならどんなに焼け焦げてても食べるつもりだけどね」
「そんなもの失敗しても出さないよ」
「それだけお前に参ってるってことなんだけど…」
「参る?」
「…やっぱり直球で言わないとダメだね」
紅牙は深呼吸をすると、見たことがないくらい真剣な顔で私に向き直ってきた。
「オレは燎が好きだよ」
「え…」
「…ただ呆然とされると、さすがのオレも傷つくんだけど」
「ちょ、ちょっと待って!」
耐え切れなくなって顔を思い切り逸らす。
嬉しいんだけど、あんな顔で言われると逆に照れるというか、本気なのは伝わってくるけどどんな顔すればいいか分からなくて顔が合わせられないというか…。
顔が物凄く熱くてまともに見られない。
鏡があれば私の顔は異常なくらい赤かっただろう。
「せめて普通に顔見せて欲しいんだけど?」
絶対顔を向けるしかないような体勢で抱きかかえられて、逃げられない。
「逆に顔見ないで欲しいんだってば!」
「!…顔、真っ赤だよ」
「わ、悪い?」
「いいや?見慣れないってだけで…可愛いよ」
耳元に囁くように言われて、一気に身体が熱くなる。
こうなったら、もう自棄だ、自棄。
「わ、私も紅牙のこと好きだからっ、その、余計嬉しいやら照れるやら気恥ずかしいやら…っ紅牙が好きって言ってくれるとは思わなくて驚いて…っだから…」
あ、ダメだ、オーバーヒートしそう。
「そっか。ねぇ、燎もオレのことを好きでいてくれるなら…オレのものになって?」
「……」
言葉が見つからなくなって、黙ったまま何度も頷く。
「…よかった。オレにしては珍しく、自信なかったからさ。もう少しシチュエーションとか考えるべきだったんだろうけど…、緊張もしてたし、カッコ悪かったかな」
「ううん…でも、自信がないなんて、珍しいね」
「お前に関してはオレも普通の青少年ってこと」
そう言うと、紅牙は私を更に強く抱き締めてきた。
「せめてキスは忘れられないようなスゴイのをしてやるから、楽しみに待ってなよ」
そんな、少し拗ねたような口調。
「うん、待ってる」
そんなのじゃなくてもいいんだけど。
…ゲームの中では少し気障な告白の後すぐにキスをしていた紅牙が、直球に告白して、キスは改めて、という形になったのが、何だか新鮮だった。
でも、恋愛初心者の私にはそんなゆっくりのペースがいい。
とりあえず、帰ったら愛海にちゃんと謝って、説明しないといけないな、と思いつつ、大人しく紅牙に抱き締められていることにした。




