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オデカケ


翌日の朝。

早めに目が覚めたから、おそらく前世以来になる、遊びに行くためのお弁当を作ることにした。


街から離れるなら、食事をするところなんて周りにないだろうし。


何を入れようか、何を入れたら喜ぶか。

そんな久しぶりの感覚を楽しみながら、料理を作っていく。


作りすぎてはいないけど、決して少なくない量のお弁当が出来た。

食べ盛りでもあるし、大丈夫だと思う。


多分。


寮を出て、結構歩く。

明るい森を抜けると、自然の豊かな草原に出た。


「知らなかった…こんなところがあったんだ…」

「喜んでもらえた?」

「…うん」

「よかったよ。うん、顔も少し明るくなった」

「顔…?」

今までそんなに暗かったんだろうか。


「少し前くらいから、心配になるくらい疲れた顔してたから」

「そう?」

色々考えてたから、それが原因かな。

それにしても紅牙はよく分かったなぁ…私、ポーカーフェイスはそれなりに上手くなったと思ったんだけど。


「何で分かった、って顔だけど、いつも見てれば分かるさ」

「…そうかな…」

私、そんなに隠すの下手かな…。


「心配しなくても、隠すのは物凄く上手いよ。でもオレはどんなに隠されても気づける自信があるんだ」

「自信…って、紅牙はいつも自信満々だし、余裕もあるでしょ」


小さい時からそうだった。


大の大人でも焦るようなモンスターを前にしても、倒す気満々で挑んでいく。

一緒に戦う羽目になる私はかなり苦労させられた。

まぁ、強くなることも出来たし、そのおかげで今の私がいるんだけど。


もちろん、前世でプレイしていたゲームの紅牙もそうだった。

攻略中のイベントも、自信や余裕を失うことなく、そして惜しげもなく甘いセリフを吐いていた。

その甘いセリフは、攻略不可になったからほとんど聞かなかったけど。

一番好きだったから、好きなセリフもたくさんあったと思う。

しばらく床掃除出来るくらい転げまわってた気がする。


今そんな言葉吐かれたら間違いなく戻った時転げまわるけど。


「あーあ。やっぱりとは思ったけど、オレの言ってる意味では通じてないね?」

「どういうこと?私のことは昔から見てるからどんなに隠してても分かる、って意味でしょ?」

「意味の解釈としては間違ってないんだけどさ…」


意味の解釈が間違ってないなら良いと思うんだけど…。


「いつもみたいに回りくどく飾って言っても、燎には通用しないってことか…直球で言うのは苦手なんだけどな…」


いきなりブツブツ言い始めた。


「何か紅牙変だよ?昼ご飯食べる?」

「…ん、ああ…そうしようかな。って、燎が何か持ってきてくれたのか?」

「お弁当だけどね。結構作ったからたくさん食べて」

「手作り?」

「うん、そうだよ」

「…そっか」

「じゃあ用意するね」


大きなお弁当を二人で、なんて本当に久しぶりだ。

…紅牙の口に合えばいいんだけど。


なんて、少し乙女チックなことを考えるようになったのは、私が恋をしているからなのか、どうなんだろうか。



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