おしおきは羞恥プレイ
目を開けると、そこは寮にある私の部屋だった。
最近このパターン多いな、私。
どうして身体が動かなくなったのに病室だとか医療室に分類されるような部屋ではないかというと、寮の一室一室が割と高性能だから。
それに、術を使える人ばかりだからある程度の治療は出来る。
よっぽどのことがない限り、そういった設備は必要ない。
じゃあなんで治癒術があるのに医者もいるのか。
実は治癒術は万能ではなく、病気を完治させることはできない。
精々進行を緩めたり、痛みを取り除いたりするくらい。
一時しのぎに薬を使うことと同じようなことしか出来ない。
完全に治すにはちゃんとした治療が必要になる。
だから、この世界にも医者はいる。
それはともかく。
私が気絶したのに自分の部屋で寝かされていた理由は簡単。
激痛に襲われてはいるけど、自然治癒できる筋肉痛が主な原因だから。
ただ、麻痺して動かない体を無理矢理動かしたから筋肉が傷ついてしまっているので、しばらくは痛みと仲良くしなければならない。
「いたた…はぁ」
やっぱり身体は痛いし、起き上がることは出来ても、起き上がる時がものすごく痛い。
でも、とりあえずは終わったんだな、と実感して息を吐き出す。
一応ノーマルエンドなんだろうけど、今の私には確認できない。
だけど、バッドエンドじゃなかっただけ、よかった。
「あっ、目が覚めたんすね」
「薊…」
「交代で術かけてたんすけど、やっと目が覚めるまで回復したんすね」
「…え、どれくらい寝てたの私」
「どれくらいっていうと2日目になるっすね」
「2日…」
あれだけの術を使ってよく2日で目が覚めた、と言うべきか2日も寝ていたと言うべきか。
「玲夜さん怒ってたっすよ。なんて無茶な術を使ったんだ、って」
「…めちゃくちゃ恐いんだけど…」
「元気になったらお説教って言ってたから今は大丈夫っすよ」
「そうだね、今はね…」
私、今遠い目してるだろうな…。
「そういや、ご飯とか食べられそうっすか?」
「何とか…」
「じゃ、持って来るっすよ」
薊がご飯を取りにいってくれた。
持つべきものはいい友達だよ。
と、思っていたら、ご飯のトレーを持って入ってきたのは紅牙だった。
…なんかデジャブ。
「あれ、薊は?」
「オレが代わってもらったんだ」
「そう…」
恋愛を頑張ると決意したものの、いざ本人と接するとなると目が合わせにくい。
「あんな無茶して…身体の痛みはどう?」
「さすがに痛む、かな」
「なら、自分で食べるのも辛いだろ?オレが食べさせてやるよ」
「え、いや…大丈夫だよ」
「ダメ。無茶したオシオキだよ」
「や、やだよ!」
しかも好きな人からとかどんな羞恥プレイ。
「ヤなことだからおしおきなんじゃないか」
「そりゃそうだろうけど…」
「他に誰もいないんだし、いいじゃん。ほら、口開けて」
「…はぁ…」
諦めて口を開けることにした。
トレーの中の食器が全て空になって、満足そうに笑った紅牙が出て行った後は、内心部屋中を転がりまわりたい気持ちで一杯になった。
…実際やったら、多分激痛で気絶するけど。




