話とは。
話があると言った割に、愛海は口を開かない。
「こんなこと、今話すのはたぶん間違っているんだと思う。でも、今言っておきたいの」
「うん?」
「…紅牙君のこと…私、紅牙君が好きなの。だから燎に近づいて欲しくない…」
「そんな…わけ、分かんないよ…何で私に言うの?」
そう返しながらも、どこかで話の内容に予想がついていた。
「紅牙君は、燎がいるから他の女の子に目を向けない。私にだって、親しげにはしてくれてるけど燎に対するほどじゃない。だから、お願い」
「……」
私は相当困惑した表情をしているだろう。
というか、ゲーム中のヒロイン…つまり愛海は性格のいい女の子というか、女の子として完璧というか…そんな印象だった。
それは好きな人がいない、というか相手から好意を寄せられていたからで、確かに自分が好意を寄せている相手がいて、その相手は自分以外の女の子に対しての方が親しげであるのは気に入らないものがあるんだろう。
そりゃあどんないい子でも嫉妬はすると思う。
…するだろうけど、まさか牽制かけてくるほどだったとは。
というかそういう面を持っていたとは。
現実の方がやっぱり人間味あるよね。
「じゃあ、それだけだから」
そう言うと、愛海はミーティングルームを出て行った。
「……」
私に言うくらいなら、さっさと紅牙に告白でも何でもすればいいのにと思ってしまう私は捻くれてるんだろうか。
もしくは、臆病者なのか。
ミーティングルームをのろのろと出る。
「愛海、サイテー」
「うわっ…陽…」
親の仇でも見たかのような表情の陽。
実際は自分の身内相手なんだけどな…。
「何アレ。他人の感情まるっと無視じゃん」
「…陽、聞いてたね?」
「う~…後半だけ」
「もう…聞くなら前半を聞いて欲しかったな」
「ごめんって~…それより、愛海のこと、気にしなくていいと思う。自分の好きな人に好きってこと言えないからこうやって相手の気持ちを無視して人に迷惑かけるんでしょ?」
「迷惑というか…驚いた、かな。愛海がそこまで紅牙が好きで、必死だったこととか…真正面から宣戦布告って、なかなか出来ないよね」
「燎は人良すぎ。あれは宣戦布告じゃなくて牽制とか根回しだって。性根までは腐ってないから燎の悪口言いまわったりはしないだろうケド」
陽は、何と言うか双子の妹である愛海に対しては手厳しいというか、いっそ冷たくなることがある。
まぁ、幼少期の我慢しっぱなしがここにきて爆発してるって感じなんだろうけど。
「まぁでも、私が紅牙に近づくのはダメでも、紅牙が近づいてきたのを拒んで紅牙が傷つくのは愛海も望んではいないだろうし、何とかなるよ」
それよりも犯人を捕まえることを最優先しないといけないしね。
「燎がそういうならいいけどさぁ~」
「うん、陽、みんなには内緒にしててね。さーて、犯人特定されたら、大忙しだよ」
何でそれを今いうの~、とじたばたする陽を置いて、部屋に戻ることにした。
書きだめ分はここで終わりなので、しばらく更新停滞します。
今更ですが、閲覧頂いているみなさま、本当にありがとうございます。
お気に入り数が100人超えたり、感想を頂いたりして、「ああ、読んでもらえてるんだ」と感激しております。
駄文ではありますが、これからもよろしくお願いいたします。




