最後の作戦を立てました。
環がいなくなって、一人、ロビーに残った。
「…胸の痛みから、逃げない…」
環から言われたことを反復する。
でも、ただでさえ恋愛をしたことのない私には無理だ。
私の場合、初めて恋愛感情抱いた相手を友達が想っていたんだ。
それを本人以外で知っているのに、私が想いを寄せ続けていいのかな。
確かに今、二人は恋愛関係じゃない。
だから想うのは勝手なのかもしれない。
だけど、絶対的に有利であることが分かっているから、後々愛海が傷つくのも簡単に想像がつく。
「…つらい、な」
胸の辺りが暖かいけど、やっぱり痛い。
これが恋をするということなんだろうか。
二回目の人生で初めて知ることになるとは思わなかった。
「燎、こっちにいたのか」
「うわっ!」
紅牙の声がして、反射的に肩をビクつかせてしまった。
「どうしたんだよそんなに驚いて」
「いや、その…別に」
「…嘘。何ともないなら何で目を合わせないんだよ」
「……」
「言ってみなよ」
子供を諭すような優しい口調。
つい話してしまいそうになるけれど、削れていた精神力を総動員して口をつぐんで首を横に振る。
「……そっか。まぁ、燎も女の子だし、オレに言えないこともあるか。でもさ、何か悩みがあるなら相談しなよ。出来る限り力になるからさ」
「…うん、ありがとう」
というか、紅牙に関係あることだから言えないんだけども。
素直に嬉しいと思ってしまう私は単純と言うか性格悪いというか…はぁ。
どうしても罪悪感があるから自己嫌悪してしまう。
「…やっぱり、」
紅牙が何かを言おうとした時だった。
寮のドアが開いて、犯人特定作戦に出ていたみんなが帰ってきた。
マーカーのコピーは成功して、犯人をすぐにでも特定できると戻ってきた玲夜さんは言った。
「…なら、特定出来次第犯人を捕まえましょう。闇精霊との契約者が相手ですから…十分に作戦を練って臨んだほうがいいですね」
「その作戦は、愛海班長と燎、君に任せます。自分だけが危険な目に遭う作戦は却下ですからね」
またイイ笑顔。
愛海は気づいてないみたいだけど、私の横にいた紅牙が苦笑いしたのが分かった。
「…はい」
「う、玲夜さん、さすがに分かってますよ」
愛海には疲れが残っているようだったけれど、すぐにでも動けるようにとミーティングルームで二人、作戦を練ることになった。
「居場所も割り出すことが出来るから…闇精霊と契約している相手だからまずは十六夜班で術を封じることが出来れば、月光班でも対処が出来るよね」
「そうだけど…そうすると十六夜班が危険じゃない?」
「それが出来るメンバーだと思ってるからね」
最初に想定していた十六夜班から先行して、というのは愛海に却下されてしまったので、やっぱり両班揃って行くことになった。
つまりは総力戦。
ゲームにあった月光班だけが犯人と戦うなんてことは、させない。
…モンスターと犯人、班を分けて倒せばいい。
問題は誰をどう分配するか。
まぁ、その時によって臨機応変に対処した方がいいこともあるのかな。
玲夜さんの言う適材適所みたいな。
…ん?ちょっと違う?
大まかな作戦が立って、部屋に戻ろうと口を開こうとした私に、愛海が先に声をかけた。
「…ねぇ燎。話があるんだ、聞いてくれる?」




