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穏やかな人ほど怒ると怖い


翌日、掲示板には昨日の御前試合の結果と賭博の件について書かれた紙が張り出された。


賭博について書かれた話を要約すると、賭博を行っていた騎士たちは全員決して軽くはない何らかの処分を受け、賭博の主犯格と愛海と私に突っかかってきた騎士たちは除名処分を受けることになった。


さすが団長、仕事が早い。


「まぁ、妥当だよね」

「うん…」

何となく元気のない愛海。

あんなこと言われるとは思ってなかったんだろうな。

純粋な性格だからこそ、人間の闇の部分を認められないところがある。

そこを危ういと言っていたのは誰だったろうか。


「女性の班長ということで甘く見ていたんだろうが…あの御前試合で見方を変えたやつらもいるだろう。引き続き、強盗事件の解決に向けて頑張ってくれ」


通りがかった団長に激励されて、私と愛海は強く頷いた。


「……」

「愛海?」

「私…見回り行くね」

「あ、うん…?」


目を合わせずに立ち去る愛海は珍しい。

どんなに身長差がある人でも目を見て話すようにしていると前に言っていた気がする。


やっぱりまだショックを引きずってるのかな。


「あれ?燎、君だけですか?てっきり愛海さんも一緒だと思っていましたが」

「玲夜さん。あ、愛海なら見回りがあるって出て行きましたけど…」

「おかしいですね…今の時間帯は月光班の見回りは入っていませんよ」

「え?…じゃあ、一人になりたいのかな…昨日の件…」

「ああ…御前試合の賭博のことですね。昔シメたんですけどね…」

「え」

「知りませんでした?個人戦だった時かな、当時の僕は好敵手だった浅葱とあたるのが楽しみだったんですが…その前に賭博をしていた連中を見つけまして。さすがに疲れそう…ではなく、暴力で解決するのはどうかと思ったので、精神的に少し追い詰めたんですよ」

うん、この人試合なかったら身体に分からせる方法を選択してたわ。

…あの玲夜さんを知ってる私たちは未だに玲夜さんのイイ笑顔というやつに薄ら寒いものを感じるのだ。


「…た、多分、若い人が始めちゃったんじゃないかな~、と思うんですけど…正直除名されたのはいい見せしめになったかも知れないですね」

「でしょうね。それはそれと、燎も色々言われたんでしょう。紅牙の様子もおかしかったので」

「ははは…そうですね。ちょこっと、言われました」

言った後に後悔した。

玲夜さんは普段、実は冷酷だ、とか言われているが、自分の身近な人が関わるとちょっと違う。


というか、紅牙を含めたあの家系はみんなそんな性格なんだけどもね。


そんなわけで、妹分である私に対してでさえ、危険な目に遭うと、玲夜さんは怒ってくれるし、無茶をしたら叱ってくれる。


本当に兄みたいな存在なのだ。


なので、兄貴分の幸せのためにも、薊とくっついて欲しいんだけど、なかなかなぁ…。


というか、それよりも今この穏やかなのに黒いオーラを何とかしないといけない。


どうすればいいの?!


とりあえず、直接文句でも言いに行きますか、と朗らかに言った彼を止めるのに時間がかかり、書類の仕事を終えることが出来たのは日もどっぷり沈んだ頃だった。


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