諦めは悪いもので。
団長の所属する第一班である現世班。
かなり新しく、入団してキャリアをほとんどつんでいない班である十六夜班が普通に戦って勝てる相手じゃない。
いや、当たり前だけどね。
じゃなかったら何で開始早々半分瞬殺されてんだって話だよね。
残ってるのは私と歩と薊。
後方の3人は回り込みを使われて倒されてしまった。
その代わり、狙ってきた3人をそれぞれ撃破していたけど。
つまりは相打ちだ。
「…歩、薊。危険だとは分かってるけど、時間稼ぎ頼んだ」
「任せなさい!」
「了解っす!」
歩と薊がそれぞれ分かれて団長達を狙ってくれている。
その間に私は、攻撃じゃなく、術に集中する。
「創世の焔よ、火弾となりて我に仇なす者を滅せよ。―焔驟雨!!」
どんな熟練者でも長い詠唱を必要とする、精霊術とは少し違った術式を使う魔術の一つ、古代魔術。
現代ではほとんど使える人はいないらしいけど、私はその少数派の一人だ。
焔驟雨で降り注ぐ炎の弾は、私のコントロールで歩や薊への直撃を避けるけど、それでも周囲には当たる。
私が当てないと分かっているから二人は集中して戦ってくれているんだ。
「く…っ」
「副団長、術を防いでたら私の攻撃、当たっちゃいますよ?」
ま、遅いけど。
小さな声でそう続けた歩の剣技が副団長の首の布を切り裂いた。
「副団長!…うわ!?」
「アタシの相手してんのに、隙を見せるとか、余裕ぶっこきすぎじゃないっすか~?」
薊は私が言うのもなんだけど、馬鹿力だ。
だからこそ、槍を手放して殴っただけでも、大の男を吹き飛ばすことは出来るわけで。
左胸を殴られて吹き飛んだ彼のバッジは、見事にヘコんでいた。
…まぁ、相手にナメられてたってことを逆手にとったんだ、そこは現世班も後で反省会するんだろう。
私達は反省しなきゃいけないことが多いから、後日になるだろうな。
今日だけじゃとても反省しきれないと思うし。
団長は、古代魔術の第二射を警戒して、私に重点を置いて攻撃することにしたようだ。
…あ。それなら。
「薊、槍私の方向いて下向けて!」
「え?!了解っ!」
薊の方に走り、槍の穂先に足をかける。
「そのまま上!!」
「っえぇい!!」
空中の無防備な状態。
このまま術を放たれたら私は避けきれない。
だけど、術を空中から放つことは出来る。
「…闇より目覚めし魔狼の咆哮よ、根の国に眠りし剣を呼び覚ませ。―闇凶刃!!」
地面から黒い刃が飛び出す。
さすがに団長は、余裕そうな表情で避けていく。
「今だ、二人とも!!」
私の声で、歩と薊の二人は団長に攻撃を仕掛けた―。




