御前試合の前
いよいよやってきました、御前試合。
チーム戦だから、ただでさえ試合の回数は少ないのに、精霊騎士団の御前試合だから、さらにその数は減る。
ちなみに、騎士団の団長副団長が所属している第一班―現世班はシードで、決勝で戦うことになる。
ゲーム中では月光班は十六夜班に勝って、現世班に負けることになる。
というか愛海が十六夜班に負けたらゲームオーバーだからね。
ここは現実だし、精一杯全力でやらせてもらおう。
…。
……。
………。
「次勝ったら決勝で団長たちとだよ~、緊張する~」
「あのねぇ…」
試合前の控え室。
まだ月光班とやりあわなきゃいけないのに、もう勝った時のことを考えている陽に、歩が呆れた声を上げる。
「寮が同じだから尚更、月光班の実力分かるでしょ?」
鍛錬を怠らない人たちばかりだし、実力もしっかり伴っている。
浅葱さんとほぼ毎朝手合わせしている歩だからこそ、実感してるんだろう。
「分かるけどさぁ…」
「陽っちはどっちかっていうと術中心っすけど、アタシら正面から受けるんすよ~?」
「私、威力は術で下げられてるとはいえ月光班を攻撃できる自信ありません…」
「環は元々サポートのが得意だからなぁ…じゃあ、今回は中距離に下がってサポート系使って。近づいて来られたら私たちが戻るまで応戦して陽の援護を頼むね」
環は能力は高いけど、性格が戦闘には向いていない。
それでも誰かを守りたいという気持ちが強いから、そういった戦闘では真価を発揮してくれる子なんだ。
「ごめんなさい…頑張ります」
申し訳なさそうに頷く環。
大丈夫、環が中距離にいれば、満さんもちょっとは躊躇うから攻撃しやすくなるんだよ。
あの人は本当の敵なら容赦ないけど、試合とはいえ味方にも容赦ないわけじゃないから。
「…向こうのほうが人数多いから…油断してたらやられちゃうよね」
「運が悪ければ瞬殺、かも?」
棗と薊の言ったことは、実際あり得る。
そりゃゲームとかなら体力ゲージを削るけど、ここは現実だから下手すりゃ一発アウト。
さらに人数は私たちが6人、月光班が9人。
ちなみに浅葱さんや愛海の剣術の師匠に協力を要請していれば10人になる。
よかった、あの人馬鹿強い設定なんだよね。
バトルキャラとしてはあんまり強くなかっ…ゴホゴホ。
隠しキャラだから出現するための条件をこなさなかったんだろう。
とりあえず助かった。
剣の系統を使うのは愛海、嵐、浅葱さん、紅牙。
この4人は接近戦が得意な反面、精霊術は得意と言うほどでもない。
無詠唱で精霊術を使ってるところを見たこともないし。
玲夜さんの薙刀と涙の棒は中距離でも応じることが出来るから要注意。
しかも玲夜さんは回復、涙は防御の方面で高い能力がある。
…ちなみに梓は和弓で、満さんは精霊術の射出も出来る特殊な長銃。咲は鉄扇。
ただし、満さんは精霊術とは違った、遠隔の魔術が得意だ。
その妹である咲は氷の術を使うから、足元を氷漬けにされると動けなくなる。
何気に、チームでの御前試合は班長の役職につく人間にとっては配置を決める時点から指揮能力の高さを競う目的もある。
私もいざという時は自分で戦いながら作戦指示をしなきゃいけない。
気合を入れなおしたところで、一般騎士さんが呼びに来た。
さぁ、勝てるように精一杯やってきますか。




