作戦会議をしよう。
あの夜の出来事が、実はイベントに類似していたことに気づいたのは、紅牙の言う通り月光班と十六夜班が合同で強盗事件の捜査を行うように命令が下った帰りだ。
「責任者か…力不足な気がするけど…」
「愛海だから任されたことでしょう?責任ある立場の人間が弱音を人の多いところで吐いたら、不安になっちゃう」
「そうだけど…責任者は燎の方が合う気がするけど」
「闇精霊の使い手が犯人なんだから、同じ闇精霊使いが責任者になっちゃ、同情して隙をつかれることもあるでしょ?だから闇精霊使いの私じゃ責任者は務まらない、ってことじゃないかな」
「……」
「さ、見回りも他の班が一緒にしてくれるって話だし、戻ったら一度みんなを集めて作戦会議しないとね。忙しくなるけど…気合い入れていこう」
「…うん」
みんなに集まってもらったのは寮の中にあるミーティングルーム。
全員が集まったことを確認して、盗聴防止用の術をかける。
「今回、月光班と十六夜班の二班で、街で起きているモンスターによる強盗事件を捜査することになりました。知っている人もいるとは思いますが、十六夜班の働きにより、犯人が闇精霊使いだと言うところまでは絞り込むことができています」
「なぁ、一個いいか?」
「嵐君?」
「何で闇精霊使いだと分かったか…何も聞かされてねぇんだけど…その根拠は?」
「それは私が説明します。とはいえ単純な理由で、強盗に入ったモンスターは種族はバラバラなのに群れをなしていて、知能有りと認識されているものばかりだったから」
「…?強盗に入ると言うか…群れて人間に危害を加えるだけなら、その辺にいる知能のあるモンスターだけでもするんじゃないですか?」
「梓は頭はいいのにモンスターを知らなさすぎ」
「何だよ、紅牙は分かるのか?」
「紅牙、梓。今は説明を聞いて。じゃあ…盗みを働くのは何故だと思う?」
「それを盗むことで自分に利があるから…?」
環が小さな声で言ってくれた。
「環っち、そりゃそうっすけど、相手はモンスターっすよ?モンスターが宝石なんて盗んで何の利があるんすか?洞窟にいるような石を食べるモンスターはこの辺にはいないのに…」
「あ…そうでした…」
うーん、と環が考え込む。
「あ~…今ので分かった。なるほどな」
勘がいい嵐はそれだけでも納得したらしい。
「…モンスターだけであれば宝石のような価値のあるモノを必要とするわけがない…か」
「光り物を集めるモンスターはいるけど…光りもしない骨董品のお皿なんて集めないだろうしね」
浅葱さんや満さんが代弁してくれた。先輩方、感謝です。
「そういった理由で、強盗事件の裏にはモンスターを操る人間…闇の精霊使いがいる可能性が高い、という結論に至りました」
うん。表情をみると、何とかみんな納得してくれたみたいだ。
さて、本題に移らないと。




