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薄れた記憶と秘密の約束


交流会が終わって寮に帰って来ても、紅牙は不機嫌だった。

へそ曲げるとくっついて離れなくなるこの幼馴染をどうにかしてくださいよ切実に。

前世では幼馴染なんてもの………アレ。

私、どんな知り合いがいたんだっけ…?


「……」


前世のこと…積極的に思い出そうとしているゲームのこと以外思い出せなくなってきてる。

そりゃ、自分がどんな顔だったかは覚えてるけど、家族のこと、友達のこと…ぼんやりとしか思い出せない。


…多分、20歳になる頃には、全部忘れちゃうかも…。


それは仕方のないことだけど、ほんの少し寂しい。


「…燎?」

今夜はソファで仲良く寝る羽目になることを覚悟していたから、寮のロビーには私と紅牙の二人きりだ。


普段の態度が軽いから誤解されるけど、紅牙はかなり誠実だと思う。

咲に言わせれば誠実さが足りないと思う、とのことだけど、それは彼の実際を知らないから思うだけだ。


実際の彼は女の子の扱いが上手いだけで、行為どころか付き合った経験もない。


「……八つ当たりして、悪かったね」

「え?」

「それで怒ってたんじゃないのかい?こんなトコで寝る羽目になってるから」

どうやら、お酒がさめてきたらしい。


「ソファで寝るなんてのはそんなに気にしてない。というか紅牙のことはいつものことなんだから慣れたよ」

「じゃあ、何でそんな落ち込んだような顔してるんだよ」

「…それは…」

前世のことを思い出せなくなりそうだから、なんて言ったら私は玲夜さんのところ直行だろう。


…だから、差し障りのない話をしておかないと。


「闇の精霊使いが犯罪を犯しているから、捜査もやりにくいなって思ってさ」

「そのことか…そういや、今日情報収集してきたんだけどさ。強盗事件の捜査、月光班と十六夜班が合同でやることになりそうだよ」

「え?」

「他の班は犯人の目星についてほとんど知らされてないらしいから」


何この苦労しろと言わんばかりのフラグ。

いや、確かにあったよ?

十六夜班と合同で月光班が強盗事件の真犯人を探すイベント。


でも、捕まえるには至らないと思う。

確保できるようになるのは、お偉いさん主催の御前試合の後のはず。


それに、ルートによって犯人が違ってくるから私も行動を起こせない。

とりあえず、私にとってはその御前試合も個人戦かチーム戦かによって今知らず知らずで攻略しているであろう人数が分かる。


逆ハーエンドもしくはノーマルエンドに向かって、隠しキャラも含めて10人いる攻略対象のうち、半分でも恋愛イベントを攻略していればチーム戦、それ以下なら個別ルートに向かうのでそのライバルキャラとの個人戦になる。


チーム戦に勝つにはかなり討伐して、キャラごとにスキルをつけないといけない。

簡単ではあるもののRPG要素があるから、他ジャンルも好きなプレイヤー受けが良い作品だった。


それはともかく。

捜査のことも、命令が来たらすぐ動かなきゃいけないから誰がどの役割に回ってもらうか考えないといけないし、御前試合だってお達しが出たら個人戦とチーム戦で、みんなにどう動いてもらうか、方針も考えないといけないし…。


「頭が痛い…」

「…オレが、闇精霊と契約できれば良かったのにね」

「え?」

「お前が辛いってのに、班が違うから直接手伝ってもやれないなんてさ…」

そういえば、十六夜班が作られて、その条件を知らされた時、一番に文句を言っていたのは紅牙だった。

上の決定には逆らえない新米騎士団員だったから、おおっぴらにはしてないけど、私や涙は飲まないというのに街の飲み屋に連れ出されたのは記憶に新しい。


「あのねぇ…班長の話を引き受けた時から覚悟はしてたんだよ。たまに愚痴聞いてくれてるだけで結構救われてるんだから」

「そうは言うけどさ……」

何かを考え込む紅牙。


「紅牙?」

「なぁ、今度どこか遊びに行こうか。街じゃなくて…自然の多い場所。人の声なんてぜんぜんしない…精霊の声しか聞こえない場所にさ」

「今の事件が片づいたら…行きたいな」

「約束な」


年相応の表情で、紅牙が笑う。

それだけでも…私は幸せ者だと思う。


明日からまた、頑張ろう。



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