精霊騎士団
精霊や魔術が存在する世界、
セレントラフォニア。
その世界に存在する、小さいが決して弱くはない国、大和国。
小国が他の大国と渡り合えるのは、精霊と契約する者が多いことも理由の一つだろう。
元来、大自然と共存してきた民族であるためだ。
この国には、精霊との契約者で構成された騎士団がある。
その中でも、少数精鋭であり新進気鋭の月光班と、更に少数精鋭で、闇の精霊との契約者のみが所属を認められる十六夜班は、単刀直入に言うと、上層部から見てかなり厄介だ。
班の長が歳若く純粋な少女であり、新しく出来たばかりの月光班はまだ良い。
同様に長が少女である十六夜班は闇の精霊に認められた者が集まり、その長も中々に人望厚く意志も強いとなれば自然と遠巻きに見られるようになってくる。
現に、今がそんな状態なのだ。
「お疲れ様です、愛海さん!」
紫苑色の長い髪を揺らす彼女には、一般の騎士から声がかかる。
「あっ、はい、お疲れ様でした!」
「……」
青みがかった銀髪を束ねた彼女には、何の声もかからない。
「お疲れ様です」
何も言われないとしても、真面目で礼儀を重んじる彼女はあくまでも微笑を作り、凛と声を張って挨拶をした後、背中を伸ばして歩いていった。