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9.クラスメイトがイケメン過ぎて俺のSAN値がピンチ

一年……orz

 ケツアゴ筋肉ダルマ改めアイリーン先生は、この学園の細かいルールなどを説明していった。物凄く暑苦しい物言いだったのは言うまでもないだろう。言葉の最中にポージングを取ってくるのも非常に鬱陶しい。

 でも何故か誰も気にしていなかった。なんでだ。


「寮では別に恋愛等は禁止されていない。ただし不純異性交遊は場をわきまえるように! ぬんっ!」


 えっ! 普通恋愛禁止とかそういうんじゃないの!? 不純異性交遊弁えるとかそういう問題か? もしかしてこれは俺に春が来る可能性があるということか!?


「ねえティエルノくん」

「ヒューヒュー」


 小さい口笛でアイリーン先生に聞こえないようにファラの言葉を誤魔化した。そもそもなんでこいつが隣なんだろうか。誰か謀ったのか。後ろはライラだし。右はよくわからないけどあんまりよくわからない男(?)だ。横顔しか見えないがなんかまぶしい気がするのだが、気のせいではないだろうか。


「では今日のところはここで解散っ!」


 最後にムキムキとポーズを決め、アイリーン先生先生は教室を出ていった。その次の瞬間には教室は一気にガヤガヤとした空気になった。


「僕はセイクリッド・スタンファ。十二歳だ。よろしく」


 そう名乗ると隣のイケメンもといセイクリッドは俺に手を差し出してきた。うおっ、眩しっ!

 なんだろうか、心が洗われていくようないくような後光だ。俺、もうこのまま死んでしまってもいいかもしれない。


「ティエルノくんボケーっとしちゃダメー」


 俺の意識を取り戻させたのはファラだった。俺の左腕に抱き付いてきて、なんだか胸があたっているような気がする。……肋骨? って痛い痛い! マジで痛い!

 隣ではファラがプクーッと頬を膨らませていた。どうしてこいつは俺の心を読めるのだろうか。


「ハハッ、可愛らしいガールフレンドだね」

「いや、そういう関係では……」

「ティエルノくんはわたしのだから、ダメなのー!」


 話しかけてくるセイクリッドにファラは何故か敵愾心も露わだ。なんだろう、独占欲か? この場合は毒占欲というのがぴったりな気がしなくもない。ちなみに俺は男とそんなことになるつもりは微塵もないからあしからず。要はあれだ、人間腐ってたらいけんというわけですたい。

 けど知り合いが女しかいないというのもダメだろう。男であっても友人の一人や二人、居たほうがいいのはわかりきっている。特にあの『はーい、それじゃあ二人組を組んでくださいねー』という悪魔のような呪文が唱えられる恐れがあるからだ。なんでそこで三人組組んでんだよ。なんで偶数のクラスなのに一人余るんだよ。どうして先生とペア組むことになるんだよ。あと同情の視線はやめて差し上げろ。


 そういうわけで俺はこのセイクリッドと友人関係を築くために腕を伸ばそうとしたのだが――


 うおっ、眩しっ!

 心が次第に澄み渡ってゆく。そして俺は気が付いてしまった。おお、なんと嘆かわしいことだろうか。どうして私はここまで罪深いのだろうか。ああ、それは原罪だ。生きること、それは罪なのだ。生まれた時から人は罪を背負っているのだ。そしてこのセイクリッド様こそ――


「えいっ!」

「ほんぎゃー!」


 俺の背中に紅葉が咲いた。咲いたというか、色づいたというか。それはファラの手形だ。ファラが勢い強く俺の背中を引っ叩き、パシーンと小気味がいいレベルではなく破裂音のような音を立てて教室に響き渡った。


「なっ、何するんだよ……!」


 本当は強く詰問したいのだが、痛みでそれどころではない。涙目になりつつファラへと振り向きその行動を咎めてやると、ファラは憤然とした様子でこともなく述べる。


「ティエルノくんが洗脳されそうだったからわたしがお灸を据えてあげたのー」

「洗脳って、そんなこと――」


 そう言いながらセイクリッドの方へと振り向いた。ああ、光が眩しい。私はこの煩わしい世界から――


「やあっ!」

「ホンジュラス!!」


 小指! 足の! 足の小指! ぐおおおお! 地味だけど! 滅茶苦茶地味だけどすごく痛い! 俺は膝を抱え込むような姿勢になって小指を押さえた。


「ねー? だからダメなんだよー」


 ねーじゃねーよ! 痛いんだよ。なんで最初と同じようにしてくれないんだよ。どうしていつも最終的に暴力的な方向に進んじゃうんだよ。どうせだったら気持ちいいほうがいいに決まってんだろ!!

 どうせならグラマーで肉付きのいい美人のお姉さんなんかが――


「とりゃっ!」

「テグシガルパ!!」


 逆! 逆の足の小指! マジでやめろ! タンスに小指とかそういうレベルじゃないんだからな!


「だってティエルノくんが失礼なこと考えるからー」

「別に失礼なことなんて考えてないだろっ!」

「だってわたし以外の女のこと考えてたよねー?」


 考えたけどさっ! 考えてましたけどねっ! 妄想くらい許してくれたっていいじゃないのよ! 夢見たいのよ男の子って生き物は!


「んー?」


 可愛らしく小首を傾げるファラ。あ、これダメなパターンだ。微笑んでるけどなんか背後に霊みたいなのが見える。なんかオラオラ言って走馬灯が見えるような気がする。流石にこんなところで死ぬつもりもないから俺はそのまま土下座をした。


「はい、ごめんなさい。俺が悪かったです」


 惨めにも土下座をかます俺にファラは納得したのか、優しく俺に手を差し伸べてきた。仕方がないので俺はその手に掴まって立ち上がる。いつもこうやって優しくて大人しくでもしていれば俺としてもやぶさかではないんだけどな……


「もう、ティエルノくんのツ・ン・デ・レ!」

「んまっ、つぁ、ちょぎ!」


 軽く(?)肩を叩かれただけなのに肩が滅茶苦茶いてぇ。照れ隠しでこれとか本当にやめてほしい。


「ごめん、僕のせいで」


 そう言いながらセイクリッドはサングラスをかけた。あ、後光が消えた。


「なんか最初は光みたいのが見えてたんだけど」

「それが僕のせいなんだ。そういう体質でね、顔を出すと何故か信仰されてしまうんだ。このクラスなら何とかなると思ったけど、やっぱり難しそうだね」

「(信仰?)……お前も大変なんだな。俺はティエルノ・ジンガス。六歳。それでこっちのがファラ・イアオン」

「君も中々大変そうな生き方をしてきたみたいだけどね」


 差し出された手をガッチリと握り合ってお互いに苦笑しあう。おお、なんか俺らって親友になれるかもしれないな。同じような不幸を背負って生きているという点に関しては同じだし、色々と分かり合えるかもしれない。

 ゴゴゴ、という擬音が聞こえるような気がするけど気にしたら負けだ。いや、やっぱりすぐ手を放そう。


「それにしても結構騒がしくしたようだけど、あんまり注目を集めないもんだな」

「それはこのクラスが【竜の爪ドラゴンクロー】クラスだからじゃないかな」

「【竜の爪ドラゴンクロー】クラス?」


 クラス名を言われたところで俺にはそれが何のことか全くわからなかった。なんだか威力不足っぽい名前というか、そのうちドラゴンがホークとかになりそうな気がしないわけでもない。そもそもこの学校のこと自体知らないからな! ファラに視線を向けると頬を赤く染めてイヤンイヤンとくねくねしていた。ダンシングフラワーかっ! お前に聞こうと思って視線を向けただけでなんでそんな反応になるんだよ。


「僕らのクラスは【竜の爪ドラゴンクロー】クラス。問題児たちが集められる特別学級さ」


 俺も問題児扱いかよっ!

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