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5.エクソシストが家に来ました。

 次の日家に悪魔払い(エクソシスト)が来ました。


 なんでも高名らしく、数々の悪魔を打ち払っているのだとか。昔の俺だったら胡散臭ぇとしか思わなかったんだろうが、今は魔法もある世界。悪魔もいれば悪魔払いもいると確信できていたため、結構期待していた。

 なんでもこの世界ではまず始めに悪魔を払える力を持っていないと悪魔払いと自称することは許されない。軽く法律に触れるらしい。そしてその力とは実戦でのみ証明されると言うので少なくとも実歴は絶対にあるのだという。


 で、最初にそいつの姿を見た俺はこう思ったね。



 こりゃだめかもわからんね。



 十字架。うん、まさにそれっぽい。聖典、いかにもな感じだ。聖水、これがないと始まらない。掃除機。


 掃除機。



 何を言っているかry



 これがファンタジーの世界だといつから錯覚していた?とかそんなレベルじゃねえ。訳がわからないよ。訳がわからなさすぎて既に俺の思考回路はショート寸前。


 何処から突っ込んでいいのか全くわからない。とりあえず一つ言えることは。


 掃除機は対幽霊だっ!!




 なにやら不安げな様子の中、悪魔払いは蝋燭を俺の周りを囲うように並べ始めた。いかにも儀式っぽい。でもちょっと待ってくれ。なんで青竹に注連縄(しめなわ)なんだ?!地鎮祭か?!土地神様か!?

 もう嫌なんだが!果てしない不安と後悔が俺を苛ます。そんなことを気にする様子もなく悪魔払いが呪文を唱え始めた。もう突っ込まない。ナムアミだかマカダミアだか知らんが俺はもう何も言わない。解決すればそれでいい。それだけが私の望みです。

 これ、フラグ臭いが大丈夫だろうか?


「く、……キタキタキタキター!!」


 あ、なんか来たみたいです。



 ――人間、(オレ)を呼んだのは(うぬ)か。



 山羊の顔にコウモリの羽。三ツ又の槍を構えたその出で立ち。


 悪魔……召喚……だと?

 いや、確かに毒を以て毒を制すとは言いますが、些かこの展開はないのではないでしょうか。いや、俺は突っ込まないと決めた。この状況を冷静に見届けるのが先決。


「あ、あなたではないです。すみません」


 ウィ~~~ン。



 ――こっ、小癪な人間がっ!!(オレ)をっ!(オレ)を誰と心得るううぅぅぅ……



 ドップラー効果を残しつつ、悪魔は掃除機の中へと吸い込まれた。吸引力の変わらないただ一つのry

 悪魔でも吸える。そう、掃除機ならね。


 よくわからないギャグの横行を耐えつつ、我慢してその儀式を一身に受ける。

 どうしたら良いのでしょうか。凄く逃げ出したいです。と言うよりも逃げてもいいのではないでしょうか。だってこれ絶対に碌なことにならないでしょ。


 悪魔払いがどこから出したのか塩を撒き始めました。凄く……どすこい!四股踏んでんじゃねえ。

 何故か囲った中に入ってきました。凄く嫌な感じですがどうしましょう。悪魔払いは両足を肩幅に広げて両拳を地面に着けて――


 飛び掛かってきた悪魔払いによって俺の意識は一瞬で刈り取られた。



 * * *



 目が覚めれば父様と母様が俺の顔を覗き込んでいた。


「ティエルノ、大丈夫か?」


 大丈夫だ問題ない。


「だから言ったじゃありませんか!まだこの子は一歳なんですよって!」

「一歳だからこそだろ?早い内に悪魔を払った方がいいに決まってる」

「でもこんな乱暴な方法なんて……」


 うん、本気でそう思います。母様の仰ることに全面同意です。と言うよりも予め何をするのか教えてください。本気で死んでしまいます。そもそも今まで生きてきて一歳児に接するような態度を受けたことがない気がするのは俺の気のせいなのでしょうか?この無駄に頑丈な肉体がなければ既にお陀仏していると思うんだが。いや、本当にこの小説のジャンルがギャグじゃなくてギャグ補正が掛かってなかったら完全にAUTOだぜ?R指定必須級のレベルで。


 あの悪魔払いの突っ張りは本当に恐ろしいほど速かった。鉄砲と呼ぶべきレベルと言っても過言ではない。フンフン言いながら手が何十にも見えたしね。腕に当たり判定がありそうな気はした。

 あと最後の頭突きはヤバかった。飛んでたような気がしたけどもういいや。首を引っ込めて一ターン溜めてたような気もしたけど気にしない。どっちかと言えばお前は聖書を針にして突きを繰り出す奴とか思いつつ何も言わないでおこう。


 そんな真面目なことを考えていると、俺を見つめる父様と目が合った。目と目が逢う瞬間マジだと気が付いた。


 父様が俺に小型のナイフを手渡してきた。これは恐らくテスト。俺に取り憑いていた悪魔が居なくなったかどうかのテストだ。前回は武器を手にしたことで俺の気が触れたように変化した。悪魔が居なくなっていたとすれば、俺はそのナイフを握ったところでどうともならず、正気を保っていられるだろう。

 それならばいざ尋常に、と言うことでしっかりと握りしめる。

 以前はこの時点で頭に声が響いてきたのだが、その予兆の一片すら見られない。これは来たか?


 と思ったのも束の間。

 手にしっかりと握っていたはずのナイフは自らの意思を持っているかのように飛び出し、父様の頭の中心の毛をごっそりと削いで壁に突き刺さった。

 なんか自分の意思と関係なく飛んでいったぞ。これはポルターガイストにジョブチェンジした感じだろうか?うん、俺は悪くない。なにもしていない。だから俺=無罪。OK?


「ティエルノ……」


 はい。

 お父様が禿げ上がった頭を撫でている。その表情は勇ましく今にも鬼の首を取らんと、親の仇を取らんとするものに酷似していた。この場合、長い友を失ったとも言うべきかもしれない。そうだ、親友を喪った痛みは計り知れないだろう。何だか右腕がプルプル震えて拳を握っていてもそれは恐らく悔しさからだ。決して俺を殴ろうなんて怒りを沈めている訳じゃない。……訳じゃないよね?


「剣術は禁止だ」


 ですよねー。

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