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2.魔法を勉強していただけなのです。

これがっ!チートのっ!力だっ!

 妹――その響きだけでご飯三杯は行けるよ!


 という猛者の言葉を思い出す。うん、全面的に同意する!

 妹という存在は何故こんなに可愛いのだろうか!始めは猿みたいだなんて思ってゴメンよ!俺のキスで許してくれ!


「あらあら、ティエルノはエレノーラと仲がいいのね」

「はいお母様!」


 ご母堂よ、その通りである。俺はこの妹を生涯愛そうぞ。絶対にパシリに使ったり暴言を吐いたり暴力を振るったりはしない。あの不幸の連鎖を今ここで断ち切ってみせる!妹が可愛い限りはな!


 ちなみにティエルノが俺、エレノーラがこの妹の名前である。そして母様がイグレル、父様がレイギスだ。姓はジンガス。ティエルノ・ジンガスが俺の名前だった。やっぱり名前が先に来るんだなぁ。


 妹との愛しい時間を過ごしたあと、俺は父様の書斎に忍び込んだ。忍び込んだ、というより普通にはいっただけなんだけどね。父様と母様の許可は既に取ってあるし。なんでも世界には魔法なるものが存在しているらしい。ヤバイ、テンションが上がってしまうのは男にとっては仕方がないことだろう。魔法と剣と聞けばファンタジー。ファンタジーといえば剣と魔法とハーレム。うむ、魔法とはハーレムにはつきものだし必須スキルだ。これを身につけないわけにはいかない。というわけで父様と母様に聞いてみたが、父様はまだ早すぎると教えてくれず、母様の説明は如何せん理論的には理解できなかった。『胸に力を蓄えて……こう!腕に力を伝える!』、ハイ、ソウデスカ。

 既にハイハイを脱した俺は危なげない歩調で歩き回れるようになっていた。魔法に関しての書籍はデスクから見て右側の本棚三段目の真ん中より左側。


 ――《魔法概論1》。


 これが今の俺の愛読書。昔の俺だったら三秒で眠りにつけていたようないかにもつまらなそうなタイトルだ。まあ内容が内容なだけに流石に眠ったりはしないけどな。

 で、この内容によると魔法は火、水、風、土の四属性が主体となって構成されているらしい。この辺はメジャーだったからすごくわかりやすい。透明になる魔法とか調べてみたけど載ってなかった。無念。

 他にはマイナーな種別の属性があるらしいが余りにも種類が多いとのこと。亜流ともいうものも数多くあるらしいが、やはり本家が安定してかつ威力を安定して出せるらしい。となれば習得するのは四属性でいいか。

 ついでに適性検査というのも載っていた。


 火→腕を地面と水平に保ち、瞑想をする。左腕が地面に向かって落ちていたら適正有り。

 水→臥して瞑想をした上で身体の広がりを感じた場合適正有り。

 風→座して瞑想をした上で身体の重みを感じなくなった場合適正有り。

 土→腕を地面と水平に保ち、瞑想をする。右腕が地面に向かって落ちていたら適正有り。


 やってみた。ぶっちゃけわからなかった。そもそも瞑想ってなんだよ!ちくしょう騙された!俺に魔術の適性がないとかないよな?ないよな……?いや、ホントに適性がなかったらどうしよう……。


 今日は結局気落ちして読書を続ける気も失せてしまった。仕方がない。今日のところはこれぐらいにしてエレノーラとの時間に費やそう。俺がそう思って《魔法概論1》を仕舞おうとすると、一冊の本がバサリと落ちた。本が雑多に並んでいるせいか戻すだけでも一苦労だ。ヒーコラ言いながら脚立を降りてその本を確認する。



 ――《    》



 なにこれ。タイトル載ってないし。これって異世界系だと魔道書でハイパーな能力手に入れるパターンだよね。所謂チート能力を習得するパターンの!……とここで一つ冷静になろう。ここは自宅だ。そして父様の書斎。これが国立図書館に眠る――とか狂気の魔道士の残した――とかそんな前置きだったらなにかあったかもしれないが、所詮は肉親の一書物。精々秘密のパパ上日記とかいかがわしい本とかいかがわしい本とかなんだろう!……あれ?これってお宝かもしれない!?

 興奮冷めやらぬ勢いのまま、俺は本を開いた。よーし、パパ、張り切っちゃうぞー!



 ――『力が欲しいか』



「ん?」



 ――『汝、力を求むか』



 前略。

 父様、あなたは自分の書斎になんてものを置いてやがるのでしょう。

 これは完全にフラグ。力を望んだ場合は邪悪な力に飲まれ、その強大な力に乗っ取られてしまうパターン。逆に拒絶した場合、魔法の力と対峙することになる。これはっ……完全なっ……修羅場っ……。

 俺の人生オワタ。



 ――『力を望むのであれば与えようぞ』



 ちょっと待て!まだなにも選択してないんですけど!無言は肯定とか勝手に判断すんなよ!絶対与えんなよ!絶対だぞ!本当にだからな!?


 アッー!!






 目が覚めると俺は書斎の中心に大の字で寝転がっていた。右手にはあのタイトルのない本が残っていたが、突然炎に包まれた。


「おわっ、バカッ、ひいっ!」


 慌てて本を放り投げた。けど今思えば全然熱くなかった。こっそりこっそりとその本に近付いてみるが、その間に本は全て消失してしまった。そして塵や燃えカスさえも残っていない。本当にそれがそこにあったことさえ疑わしい。むむむ、なんだったのだろうか。


 それにしても力ってなんだろうか。身体をくまなく探ってみるが、結局変なところはなかった。と、そこで身体から溢れる液体みたいな何かが見えた。えっ、なにこれこわい。

 その液体みたいな何かは俺の身体から湧いて出ているようで少し空気中に漂っては空気中に溶けている。ドライアイスの煙みたいな感じというのが一番しっくりくるかもしれない。


 え、これ生命力とか言わないよね?これが出尽くしましたあなたは死にますとかそんなフザけたオチないっすよね?ヤバイよヤバイよ!


 俺は慌てて母様の元へと走り出した。





 結局それは魔力の奔流だったらしい。それが見えるようになったら少なくとも魔力の適性が現れている証拠なのだとか。試しに何か魔法を唱えてみるように促されたが、今日の盛りだくさんのイベントで既に魔法は懲り懲りだったので遠慮しておいた。

 魔法使った瞬間邪神復活とかないよね?俺の魔法で地球がヤバイとかないよね?ああ、もう本当に父様のせいだ。あのクソオヤジ、今度寝てる間にコショウを振りかけてやるっ!


 ちなみに俺が母様の元に走りこむまで上げていた悲鳴の話で暫くは話題はもちきりだった。ぐぬぬ。

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