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11.今日はいい日だったなぁ

颯爽と現れて颯爽と立ち去るのさ。

 男子寮は思っていた以上に綺麗だった。別に蔦に巻き付かれているわけでもなく、弾痕があるわけでもない。そもそも予想していたのが完全にハードボイルドでアウトローな雰囲気(笑)だったので想像以上に綺麗なのは当たり前か。


 寮と校舎は廊下によって直結。例え屋外が嵐であっても何の影響もない。寮だけが辺鄙な土地にあり、毎日何十キロも移動するなどという悲惨な目には遭わずに済んだ。これができるのは潤沢な資金と土地があって初めてなせる事だ。建物を別々に作ってしまった方が細かい調整などは不要だし、管理も簡単になる。それをあえて廊下で繋げるということは、それだけ余裕があるということだ。そう考えてみると、この学校はやはりそれなりに凄いのだろう。

 転生前、俺は公立で教育を受けてきたため、私立がどのようなものかは知らない。しかし、今こうして目の前にしているものからすれば、それがおおよそどんなものだったのか想像するにかたくない。畜生、私立校のブルジョアどもめ……。


 で、だ。俺の目の前に掲示されている木板。ちょうど寮の入り口に立てられている。そこに連綿と書き連ねられたおびただしい名前の数々。名前の左に添えられる番号から察するに、恐らくこれは寮での部屋割りを示したものだった。こう膨大な数が並んでいると、この学校がいかにもマンモス校であるというのが見て取れた。『ctrl+f』で検索出来たらいいのに。


 俺は一年次だからっと……あった。


 1-114 ティエルノ・ジンガス

  ロクサ・トランパス


 いいよ(こいよ)。なるほどなるほど。覚えやすくていい感じだ。別に俺はそんな趣味ないけどね!

 相方の名前は『ロクサ・トランパス』というらしい。別に聞いたこともない名前だ。聞いたことある名前の方が少ないから当たり前か。普通この流れだとあのおっさんだと思うけどさ。結局名前は聞けてないんだけどね。


 どうやら俺の部屋は二人部屋らしい。部屋によっては三人部屋とかあるみたいだしそういう意味では当たりかな? 出来れば一人部屋の方がいいのだけれど、それはまぁ仕方があるまい。なんで一人部屋のほうがいいかって? そりゃあれだよ、アレするためだよ。


 筋トレのことな!


 でも一人部屋貰ってる生徒がそこかしこにいるみたいだ。どういう基準でこの部屋割りが決められているのか気になるところだ。金か? 金の力でなんとやらか?

 俺は無一文なのでどうしようもないです。そういえばそのへんのことはどうなっているんだろう。無事に入学出来たのはいいが、学費が払えなくなったら『退学してくださいよぉ~』とか言われたりしないだろうか。そもそも学費って幾らだ? 月々払うのか? 年間で一括なのか? 後でちょっとパンフ見てみるか……


 そして俺はようやく部屋の前に辿り着いた。扉をノックするが特に反応はなし。まだ相部屋のやつは来てないのかな? 実は何かの手違いで一人部屋でした! とかいうオチは……ないだろうな。

 部屋は白く美麗な壁で着飾られ、最奥には外の景色を眺められるバルコニー。特に家具は備え付けられていないが、唯一二段ベッドが据え置かれていた。部屋の大きさはおおよそ十畳ほどになるだろうか。

 キッチンはコンロが二口、シャワールームは風呂釜がないタイプ。ちなみにコンロもシャワーも魔石を利用したもので、現代社会のものと酷似はしているが使い勝手が僅かに異なる。一旦慣れてしまえば違和感もなく使いこなせるだろう。


 俺はトラウマのせいで魔法が使えないけどな!


 端に寄せるようにして置いてある複数の小包。それぞれ名前が書いて分類されていた。律儀に父上・母上から送られた荷物だった。後で整理しよう。今日できることは明日やるのが俺のポリシーだ。



 で、まずはパンフレットとか書類を読んでみることにした。

 結論から言うと学費は年間一括払い。途中で退学になった場合でもその分の学費は返還されない。成績上位0.1%には返還不要の奨学金が支払われるらしい。いわゆる奨学生というやつだ。奨学生は最高だぜ!


 俺の場合は両親から支払われているようだった。パンフレットに紛れ込ませるようにしてあったパパ上からの手紙にそう書いてあった。年毎に振り込む形式のようで、残念なことに五年ほどはこの学校で教育を受ける必要があるそうだ。

 成績が優秀であれば飛び級のようなこともあるらしいが、実際そう簡単には行かないのが現実だろう。奨学生の中でも一割程度、飛び級が出来るかどうかのレベルらしい。人生ハードモード。でもまだイージーモードは許される年齢だと思うんだけどなぁ。


 その上、俺はファラの面倒も見なくてはならないらしい。仮にも男なのだから女をリードするのが鉄則なのだとか。いや、ファラは女じゃ……ペロッ、これは殺気!?

 とても可愛い女の子なので俺が導いてやらないとな!


 この学校を卒業するには単位が必要で、卒業するに足る単位を取得すれば卒業認定試験を受けることが出来る。そう、単位を取得しただけでは卒業できないのがミソなのだ。この卒業認定試験は年に二回までしか受けることは出来ない。これに落ちてしまえば来年まで卒業出来なくなるらしい。しかも年度毎に試験の難易度が変わるらしく、誰一人として卒業出来ない年があったとも聞く。これおかしいだろ。

 必要な単位は詰めに詰めれば四年で取得出来るらしいが、一般的には五六年かけて取得してから卒業するらしい。この制度のトラップは、やる気がある者は問題なく卒業出来るが、適当にやっているといつまで経っても卒業出来ないということになってしまう可能性があることだ。これも生徒の自主性を重んじるというやつかね。


 俺はよく知らないが、聞いた話だと大学は似たような制度を取っているんだとか。文系と理系でスケジュールが激しく違うとかツ○ッターで回っているのを見たことがある。

 だから俺は勿論文系を選択した。今となってはどうでもいいことだけどな。


 これから一週間かけて今後半年の授業を選択していくことになる。そこはファラとかと相談しながら決定していくことになるかな。べっ、別に俺一人で授業選択してボッチになりたくないからとかそういうわけじゃなくて、ファラの面倒を見ないといけないから仕方なくなんだからねっ!?



 とりあえず今日するべきことは特になさそうだし、学食に行って飯食ってもう寝ようかな。

 学食って基本的に安い早い旨いってイメージだから期待は出来るな。……あれ? 俺現金持ってないから食事出来なくね? マジかよ、無一文とか何もできないじゃん! 食事も買い食いもおやつもなしってことかよ! ジーザス! これは神の試練ってやつかい? 特に何も信仰してないけどさ。


 もう何もやる気起こらないわ。水飲んで寝よ。いきなりなんちゃらかんちゃらの一ヶ月なんちゃらかんちゃらでもこんな生活はしないだろうなぁ。

 明日になったらファラとかにたかるしかないな。アイツん金持ちだしなんとかなるだろう。迷惑料って考えれば妥当だろうし。

 俺氏、圧倒的クズ……! でもないか。だってあの野獣……(ティエルノくん?)……なんでもないのですよ☆


 水を腹一杯に飲んだ後、タプタプと音を立てる腹を抱えながら俺はベッドの上へと転がった。

 二段ベッドなら俺は当然上派。はい、今上下って単語に反応したやつは帰って、どうぞ。



 長かった一日もようやく終わろうというもの。色々あったが、悪くないスタートなんじゃないだろうか。これからの一年、希望に満ち溢れた人生を歩んでいけるのではないかと思って頬をニヤけさせながら微睡みの中へと落ち込んでゆくのだった。






「……臭い?」



 一挙に飛び出した俺は、初日にして一切の財産を火事で失ったのでした☆

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