1.絶対!ハーレム宣言。
全力でぶっぱ。筆がサクサクと動くけど収集付くのかこれ?
俺こと一条 一が最期に聞いたのは親友、中宮 宣親の叫び声だった。
『危ない!』
――ギャギャギャギャガガゴン!
――ガチャガチャン!
――グチャ!
果物が砕けるような軽快な音がすると共に、俺の意識は完全にブラックアウトした。
* * *
その時、俺には何故か死んだという確信があった。だってそうだろう、鉄骨が自分の身体に突き刺さるのが分かっていたらもう確実に死んだとしか思えない。
でもその言葉には『普通は』と形容するのが妥当なのかもしれない。
簡潔に言おう。
俺は転生していたッ!!
もう一度言おう。
俺はry
気が付けば周囲を囲むのは高い木の柵と天井をクルクル回るあいつだ。あれだ。名前は知らないけど。
そして俺の顔を覗き込んでいる巨人。しかもよくわからない言語をブツブツと俺に向かって唱えていた。本当にチビるかと思ったね。……本当は漏らしました。はい。死にたいです……。
何かを言おうとしても口の筋肉が満足に動いていないのか、あーとかうぶーとか意味のない言葉しか発せないのは本気でどうにかしたかった。必死こいて俺が叫び(喚き?)続けたのでようやく巨人の女――いや、母親なんだけどね――が俺のおむつをスルッと剥いた。全裸だ。勿論絶叫した。
そして俺の意識は1年ほど飛んだ。飛んだんだ。覚えていない。覚えていないのだから仕方がない。そうだろ?うん、ちかたがないよね☆
そして俺は自力でトイレへと向かう術を身に付け、そして言語の習得をこなした。現在は文字の習得に励んでいる最中だ。そこには厳しく辛い道のりがあったことをここに表そう。アーメン。
こちらの世界では日本みたく平仮名カタカナ漢字みたく通常の生活を送るための言語が煩雑なわけじゃない。一つの言語だけで十分。英語圏の文字みたいな感じだと思う。
気がつくと母親の腹が膨らんでいた。父親も笑っている。
ヤることヤってんなぁ、とは思いつつとりあえず俺もそれに便乗して笑っておいた。是非とも生まれてくるのは妹でありますようにと本気で祈っておいた。姉じゃなくて良かった。
二次の姉とは本当にいいものである。現実の姉とはまるで別の生き物みたいだ。現実の姉とは『おい、ジュース買って来い』とか『勝手に部屋入ってんじゃねえよ。殺すぞ』だの、『オタクとかキモすぎ。死ねよ』や『視界にはいんじゃねえよ、気分悪くなるだろ』と言った誹謗中傷の嵐、暴力の乱舞、何度涙で枕を濡らしたことか……
ハッ!暗い気分になる必要はない!両親が共に目を見張らんほどの美形であることは既に確認済み。これで俺の人生は既にバラ色なことは確信できていた。『性格がよければ顔は特に気にしないです※ただしイケメンに限る』、『面白い人が好きかなぁ~※ただしry』、『いつもはクールだけど、私に関してだけは情熱的って言うかぁ、そんな感じの人がタイプかなぁ※』という本音を隠した雑誌やらテレビに騙され続けてきたこと幾数度。俺は齢十七歳にして人生を悟った。年齢=彼女いない歴を常に更新し続け、完全にオタクコースまっしぐらだったあの頃。猫もびっくりだ。反省も後悔もしていない。三次嫁などいらぬ!と思い続けて最後のイベント、修☆学☆旅☆行!を迎えたところであの事故だ。人生悔やんでも悔いきれぬ……。もしかしたら俺に惚れている誰かが告ってくるんじゃないかと淡い妄想を抱いていた俺に天誅が下ったのではないだろうか。と考えもしたが、フフン!神よ!私は帰ってきた!異世界転生した俺に不可能はない。今ここに《絶対!ハーレム宣言》を唱えさせて貰おうではないか!
まずは乳飲み子として一緒にいるこの少女を幼馴染として俺のハーレムの第一号としてやろうではないか!幸いにもこの娘の母親はかなりの美人でこの幼馴染も将来は有望なのは間違いがないだろう。紫式部もびっくりの同年代光源氏計画である。グフフ。
ついでに言うと乳母は若く、その至宝は非常に柔らかかったことをここに記そう。初めて味わったその果実の味はミルクの味がしました。大変、美味でございました。しかし知性をすぐさまに発揮したばっかりか、すぐに離乳食に移されてしまったことを悔いない日々はない。いや、きっとすぐに出会える日が来る。その日まで、さらばだ乙杯よ。
とある朝、偉大なる母上殿の股下から液体がこぼれ落ちる瞬間に遭遇した。
あれは本当に衝撃的だった。失禁やらラブなんちゃらではない。なにが起こっているのか理解できなかったが誰にも理解できないのではないか。もっと恐ろしいものの何かなのか。父上殿はオロオロとしているわ乳母は叫びまくって何やら指示をバンバン飛ばして上を下への大騒ぎ。俺が意識を取り戻したのは別室から『ギャー』だの『レイギスーーーー!』だの『おうち帰るううううう!』と言った訳のわからない叫びが耳に入った頃だった。いや、本当に阿鼻叫喚と言った感じなのかもしれない。俺はいつの間にか俺を膝に抱えた執事のファロンさん(五十七歳、めちゃくちゃ渋い)に抱えられたまま、その恐怖を押し殺していた。本当に怖い。誰だ命の誕生が神秘的だなんて言った奴、出てこい。お前はこの恐怖を味わったことがないんじゃないか?出来ることなら二度とこの現場に立会いたくない。絶対にだ!
――気が付けば俺は兄になっていた。