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公園

 翌日、八重子は携帯電話の呼び出し音で目が覚めた。

 窓の外は、とっくに日が登っていた。鳴り続けるベル音を、追い続ける八重子の手が蛇の様に動くと、ベッドの傍に置いていた携帯電話を掴んだ。そして、

「はい、もしもし……」

 目覚めの擦れ声でそう言った。

「もしもし…… 何処に居るんだ」

 携帯電話のスピーカーから聞こえてきた声の持ち主は清弘だった。

その声に驚いて飛び起きた八重子は、乱れた髪の毛を手で掻き上げると、湧き上がってくる恐怖心を殺しながら言った。

「もしもし…… あなたなの」

ベッドの隅に置かれた目覚まし時計に眼をやると、既に十時を廻った頃だった。そんな時間まで眠っていたのかと、慌ててベッドから起き上がった八重子は、

「ごめんなさい。今、目覚めた所だったの」

 首と肩で携帯電話を挟むと、洋服を取り出して着替え始めた。

「今日のディナーの事を考えながら、昨日の夜は眠れなかったのかな。まあいい、夕方の五時に、あの公園の前で待っているよ。

 それと、クローゼットに掛かっている黒いドレス。それに着替えて来てくれ」

 落ち着いた口調でそう言った清弘だった。そして、電話が切れた。

八重子が言葉を発しようとしたが、通話が終わった事を知らせる電子音が耳に入ると、ハッとして携帯電話の画面を見た。

そこには、今まで話した通話歴が表示されている。それを暫くの間眺めていた八重子は、そのまま静かに携帯電話を折り畳んでいた。

そして、

「公園の傍で……」

 そう呟きながら、ゆっくりとベッドの上に座っていた。

虚ろな眼で何かを考えていた八重子だったが、両手でベッドを抑える様に立ち上がると、寝室の扉を開けていた。


 あの公園……


 それは、清弘と八重子が初めて食事をする時に、二人で待ち合わせた場所の事だった。


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