九話 決断
眠れぬ夜を明かした私はまず、近くにある洗面器に水差しの水を入れて、顔を洗いました。
それから、障子を開けて外の空気を吸いました。
トン、トンと扉を叩く音がしました。
「失礼致します。おはようございます。エリカ様」
昨日のメイドの中の一人の女性が立っていました。
「おはようございます。えっと…」
「わたくしはエリカ様専属のお世話をさせて頂くことになりました。メグと申します」
「そうですか、よろしくお願いします。メグさん」
「それでは、さっそくお召し物を替えていきます」
メグさんに手伝ってもらって和服似た着物を着ることになりました。
白の生地に綺麗な金魚が描かれた着物です。帯は赤で後ろは可愛いリボンを結んでもらいました。
食事は部屋で食べてメグさんに今日の予定を聞かれました。
「うーん……」
私は考えました。
ちなみにリヒャルト兄さん達は城下町を観光するそうです。
「ねえ、レッド。どうしたらいいと思う?」
私の相棒でお父さんの知己である火の精霊であるレッドに相談しました。
「そうだな。やっぱり、背中を見るのが良いんじゃないか」
「背中、誰の?」
「そりゃ身近にいる奴じゃあねぇか」
私は身近にいる人の顔を浮かべてまず最初に浮かんだのは兄さんでした。
「メグさん、私、兄さんの仕事をしている所を見たいです」
「そうですか。それでしたら、今は執務室にいらっしゃるはずです。行ってみましょう」
そう言って、メグさんは私を兄さんのいる執務室へと案内してもらいました。
兄さんは大きな机にぽつんと座って、紙の山に埋もれてせっせと書類に版を押して仕事をしていました。
意外に地味な仕事をしているなあというのが正直な感想でした。
でも、これも重要なことが書かれているんだなと思いました。
「お、エリカ。何か用かい」
「うん、今日は兄さんの仕事を傍で見ていたいんだけど…良いかな?」
「ああ、いいぞ。でも暇だぞ」
「うん、大丈夫」
そう言って、私は兄さんの傍でずっと兄さんの仕事をする姿を見ていました。
午前中は執務室で事務作業をして、午後からは色んな人との謁見をするために玉座に座り、挨拶をしてしていました。
私はそっと兄さんの姿を確認するだけでしたが、玉座に座る兄さんは別人ようで遠く感じました。
その日の夜、レッドから話をされました。
「ナァ、エリカ、そろそろ俺はユージンの所に戻ろうかと思う」
「え、そんな、どうして急に!」
「いや、俺もお役御免というか、そろそろ別れの時期かと思ってな」
「そんな、寂しいよ」
「変わりって言っちゃ何だが、俺の娘を紹介しようかと思ってな」
「え、レッドって娘さんがいたんだ」
「ああ、そうだ。名前はエクレールだ」
「エクレールさんっていうの」
「ああ、今度、合わせてやるから」
「うん」
私はレッドと別れることになりましたが、その変わりに娘のエクレールさんと会えることになったので楽しみができました。
そして、次の日はリヒャルト兄さん達と共に城下町へと行ってきました。
城下町はどこも賑わっていて人で溢れかえっていました。
この国を背負って生きているのが兄さんなんだ。
そう思うと、兄さんはきっとこの国が大好きなんだって思いました。
この国の人々に触れ、話して、一緒に笑って生きてくんだ。
今日一日町を歩いて、見て、感じて、悩んでいた気持ちに整理つきました。
そして、次の日の朝、私は自分の部屋に、お父さんと兄さんを話があると呼びました。
「エリカ、話って、もしかして地球に帰ることかい」
お父さんが言いました。
「もう決めたよ。お父さん、兄さん」
お父さんと兄さんとレッドが見守る中で私は笑って言いました。
「あのね、私、 」




