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私の異世界物語  作者: 宮古奈都
二章
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八話  蝶と蛍

 風邪をひいたあの日から、私はヴィクトリア姫のために何か出来ないかと思い始めました。


 何か思い出になるような何かを……。


 私はそのことを考えていました。


「エリカ、どうしたの」


 ああ、今は大事なお茶の時間でした。


 最初は気が重かったヴィクトリア姫のお茶の時間も残りあとわずかだと思うと、大切な時間になりました。


「いえ、何でもありません」


 私は紅茶を淹れて、ヴィクトリア姫に差し出しました。


 ヴィクトリア姫は優雅にカップを持って、一口紅茶を飲みました。


「うん、上出来ね、でもまだまだよ」


 初めて、上出来と言われました。合格点をもらえたみたいです。


『おいしい紅茶を淹れよう 上級編』を読んで勉強したかいはありました。


「えへ、ありがとうございます」


 私はにこりと笑うと、ヴィクトリア姫も微笑みました。


「今日は何して遊びましょうか」


 最近は、頬を引っ張られたり、摘まれることはなくなりました。


 その代わり、ヴィクトリア姫が沢山の楽器を演奏してくれたり、いくつものお話をしてくれるようになりました。


「今日は何か楽器で演奏でもしようか」


「はい」


「エリカも何か出来そうなのある?」


「えっと」


 私は以前、吹いたソプラノリコーダーを持ってきました。


「これなら、出来ます」


「そうね、じゃあ、何かお願いするわ」


「では、『蝶々』を演奏したいと思います」


 私は、楽譜がなくても暗譜している曲を思い出して、演奏しました。



 (しばし演奏中♪)



 すると、不思議なことが起こったのです。


 蝶達が数羽、窓から現れてやってきたのです。


「あら、蝶が曲に魅せられてやってきたのね」


「え……」


「その笛は、前にも言ったかもしれないけど、魔笛でね、曲に合わせて、生き物を呼び寄せて、操ったり、願いを叶えさせたりするものなのよ」


「そうなんですか」


 私は今の説明を聞いて、それで何か出来ないかと思いました。

 

「ヴィクトリア姫様、あの、お願いがあるんですけど!」


「なあに」


「この、ソプラノリコーダーじゃあなかった、この笛、しばらく、貸してもらえませんか?」


「?、ええ、別に構わないわ」


「本当ですか、ありがとうございます」


 私はヴィクトリア姫にお礼を言って、この魔笛の使い方を考えました。






 ここはお城の庭園です。


 初めてお城に、来た日は眠れなくて、レーガン様と会ったことを思い出します。


 今、レーガン様とリディアナ姫はもうすぐ、新婚旅行から帰って来るという知らせがあります。


 レーガン様とリディアナ姫が戻ってきたら、お城はもっと活気が出ることだと思います。


 庭園は季節の花々が咲き誇り、彩を兼ね備えています。


 私は、庭園の噴水の近くで魔笛を持ってきました。


 今は、食事も終わった、夜の時間です。


 辺りは暗くなり、お月様は顔を出して、夜の暗闇を優しく照らしています。


「ところで、エリカ、これからその魔笛をどんな風に使うんだい」


「えへへ、これから見てのお楽しみだよ、レッド」


 私は、魔笛を構えてそっと、ある曲を吹きました。

 


 (しばし演奏中♪)



「これは、キレイだな」


「やった!うまくいったみたい」


 私はある曲を演奏して、ある生き物がやってきたので、成功したことに喜びと自信がつきました。


 私はその後も夜にその練習をして、ヴィクトリア姫を喜ばせよう思いました。






 ある日の夜、私はヴィクトリア姫を散歩に誘い、庭園へとやってきました。


「今日は、ボクに見せたいものがあるんだって、何かな?」


「はい、これから、お見せしたいと思います」


 今日のお月様は真丸く、まるでにっこりと笑っているようです。


 木々は夜風に吹かれて、さやさやと音をたててざわめいています。


 夏の季節に咲く花達はどれも綺麗に咲き乱れ、夜の暗闇でさえも、誇らしく花達はどれも堂々としています。


 私は噴水の前に立つと魔笛を持って、このために毎晩、練習した曲を吹きました。


 音楽に合わせて、暗闇の中から、ポウっと光が現れました。


 それは、最初は一つや二つだったのが曲が終わる頃には、数十という数になり、私達の周りを優しい光が照らしています。


「すごい……」


 ヴィクトリア姫はそう言って、ポウっと光る明かりに感動して、見ています。


 私は魔笛で吹いた曲は『蛍』でした。


 ここ毎晩、『蛍』を吹いては蛍を呼び、集めていたのです。


「あの、どうでしたか」


「ええ、すごく綺麗だったわ……」


「ありがとうございます」


「お礼を言うのは、こちらのほうよ」


 ヴィクトリア姫は私にゆっくりと手を伸ばして、私の頬を両手で包み込みました。


「これは、今夜のお礼よ」


 そう言って、ヴィクトリア姫は私に顔を近づけて、ちゅっと額にキスを落としました。


「にゃっ!」


 私は驚いて、変な声を上げてしまいました。


 ヴィクトリア姫の行動に心臓がドキドキしてしまいました。


 私は顔が赤くなったのを感じましたが、幸い夜で辺りが暗かったのが良かったです。顔が赤くなったのを知られないですみました。


「それじゃあ、今夜はありがとう、エリカ。お休み、良い夢を」


「はい、ヴィクトリア姫様、お休みなさいませ」


 そう言って、私はヴィクトリア姫と別れました。



 今夜は喜んでもらえたみたいで良かったです。


 ヴィクトリア姫とこうして過ごせるのもあとわずかとなりました。


 私は、限られた期間を一緒に笑って過ごせたならいいなと思いました。


 この真夏の夜に、光り輝く蛍のように精一杯輝いて、ヴィクトリア姫の思い出の中に、少しでも私が入ればいいなと思うそんな夜でした。


 



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