十三話 別れと新しい友達
今日は孤児院のみんながお城から新しい孤児院へ引越しする日です。
私は明日から孤児院を出て、お城に使えるメイドとして働くことに決まりました。
そして孤児院のみんなは荷造りを終えて、お城を出発します。
「エリカ、どこに居てもあなたを思っているわ。何かあったらいつでも孤児院に帰っていらっしゃい」
「はい、ミーナ院長先生」
ミーナ院長先生はそう言うと私をぎゅっと抱きしめました。
抱きしめられた暖かいぬくもりは心地よくて安心します。
誰かに抱きしめられるのは、いつの時でしょうか。
小さい時はよく兄さんが抱きしめてくれました。
もう、ずいぶん久しぶりです。
「えりー。ばいばい」
「うん。エリックも元気でね」
今度は小さなエリックをぎゅっと抱きしめました。
この短い間でエリックは大きくなりました。
そして、エリックは他の子供達と一緒に歩き出しました。
最後に挨拶したのはシェリでした。
「エリカ~元気でね。離れててもずっと友達だよ」
「うん、シェリも元気でね。お仕事場、今度、遊びに行くから」
「約束だよ」
「うん、約束」
シェリもこの引越しを機会に城下町の服屋さんに就職が決まったのでした。
シェリとは離れていても、ずっと友達です。
それから私はお城に残り、メイドのお仕事について私のお世話役のミスリルさんと一緒に説明を受けながら、挨拶に回りました。
挨拶を回り終えると新しく私の部屋を案内されて、私の荷物が運んでありました。かばんが一つベッドの脇に置いてありました。荷物を整理しました。
夕方になり、お仕事をしていたメイドの方達が部屋へ戻ってきます。
私と同室になる人はリンという女の子と聞いていました。
どんどん!
部屋の扉を叩く音が響きます。私は扉を開きました。
「はい!こんにちは。私、リンよ。はじめまして」
「こんにちは。私はエリカです。よろしくお願いします」
外から入ってきたのは、亜麻色の髪に鳶色の瞳を持ち、顔にそばかすがある女の子でした。
「私、年は十五なんだけど、エリカはいくつ」
「十三です」
「へえー、私のにこ下なんだ。まあ、仲良くしてね。これからよろしく」
「こちらこそ、よろしく。リンさん」
そう言って、リンさんは気さくに私に話しかけてくれました。
「そうだエリカ、私達と同じメイドの友達、紹介するから待ってて」
すると、リンさんは部屋を出ていきました。
しばらくすると、リンさんは女の子を連れて部屋に戻ってきました。
茶髪にハチミツ色の瞳の眼鏡をかけた女の子です。
「エリカ、この子、紹介するね。名前はエマ。年は十四。私達と年が近いでしょう」
「はじめまして、エマです」
「はじめまして、エリカです。よろしくお願いします」
「よろしく」
エマさんは控えめながらも丁寧に挨拶してくれました。
「エリカってさ、あのアスフィールム孤児院の出身なんだよね」
リンさんが私に質問しました。
「はい。そうです。リンさんは?」
「私は城下町のヤトワナ商会って知ってる」
「知ってます。あのエストランダでも一、二を争う貿易会社ですよね!」
「そう、私の父がそこの社長で、私はそこの長女なんだよね」
ヤトワナ商会といえば貿易会社なんだけど、色々な系列のお店をやっています。
私もマッチを売っていた時に、そのマッチはヤトワナ商会の下請け会社から作ってもらっていたので、
私も大変身に覚えのある会社なのです。
その会社の社長の娘さんといれば、大変裕福な社長令嬢です。
「そうそう。私は礼儀作法やら結婚相手を探せって、言われながら、お城に上がったのよねえ」
「私も似たような感じ」
エマさんも同意しました。
この世界では十六歳になると成人して、だいたい十八歳から二十歳位が女性の一般的な結婚年齢らしいです。日本と比べるとずいぶん早いです。
男性でも二十歳から二十代前半に結婚するそうです。
それから、一般的な寿命でこの世界では六十歳代後半と短いのです。
日本は八十歳が平均的な寿命なのに、さすが長寿国といわれている日本です。
でも、この世界にも長寿国と言われる国があるそうです。
どこだか知りませんけどね。
「エマさんはどこからきたんですか?」
「私は城下町の一般的な家よ。でも、両親は学校の先生をしているの」
「なるほど……」
エマさんの知性的な感じは、両親からきちんとした教育を受けて育ったのだと思いました。
このエストランダでは、子供の義務教育はなく学校へ行かない子供達がいます。
まだ、マッチを売っていた時は私より小さな子供が働いていました。
勉強することよりも働くことを優先させられているのでした。
孤児院では教育を大切にしていました。小さな子供達には本を読み聞かせていて、それから少し大きな子供達は字の読み書きや算数を学んでいました。
それから、もう少し大きくなると社会勉強のために外に出て働くという風にしていました。お金がないというのもありましたが。
私は少し例外である程度大きかったので働きながら、勉強するという方法でした。
今ではもう、エストランダ語を完璧に読めるようになり、本もスラスラ読めるようになりました。
それから、私とリンさんとエマさんと三人で楽しく話しながら夕食を食べて、お風呂にも入って部屋に戻ってきました。
「リンさん、お休みなさい」
「うん、お休み。明日から仕事だけど、慣れれば大丈夫だから」
「はい、ありがとうございます」
今日はお世話になった孤児院のみんなと別れましたが、リンさんとエマさんという新しい友達と知り合う素敵な一日になりました。
そして、私は明日からいよいよ始まるメイドのお仕事を考えながら、眠りに落ちました。




