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口元を隠すものは

作者: 小雨川蛙
掲載日:2026/10/31

 魔女狩りから随分と時間が経ちました。

 しかし、未だに。

 いえ、現代にあっても魔女は迫害されております。


 そんな光景見たことない?

 ……それはそうでしょう。

 中世ならいざ知らず、現代であれば迫害は目に見えぬ形で行われるものです。


 それに中世ならば命を奪うのは他者でした。

 しかし現代の迫害は他者ではなく自らに命を奪わせるのですよ。


 言っている意味がわからない?

 それは随分と幸運な人生を歩まれているようですね。


 いえ、皮肉ではありません。

 まぁ、信じていただかなくても結構ですが。


 それにそもそもあなたはインタビューに来たのでしょう?

『現代を生きる魔女の事情とは!?』でしたっけ。

 私も暇じゃないんです。

 定時になりましたらとっとと帰らせていただくつもりなので、こんな無駄な質問をしていてよろしいのですか?


 ……はい。

 質問にお答えしましょう。

 たしか――『魔女は現代でも姿を隠して生きておりますが、この数年はさらに周りから隠れるのが上手くなった』わけですが、その理由は何故か?


 というやつですね?

 少し考えれば分かるでしょうに。

 本当に魔力を持たない人々はお馬鹿さんですね。


 良いですか?

 魔法を使うには2つのことが必要なんです。


 一つは魔力。

 これは言うまでもありません。

 では、もう一つは?


 考えてみてください。

 魔法を使うには何が必要ですか?


 …。

 ……。

 そう。

 詠唱です。

 ここまで言えば分かるでしょう?

 我々がなぜ以前より見つかりづらくなったか。


 え?

 わからない?


 嘘?

 本当に?


 ……数年ほど前。

 世界的に何が流行りましたか?

 そして、それによって政府は何を命じましたか?

 それをもう一度考えてみてください。


 それでは、私はこれで失礼します。

 寒い時期なのでどうかあなたも風邪を引かないようお気をつけて。



 *



 そう言って、魔女はマスクをしてそそくさとこの場所から出ていってしまった。

 口元を隠す瞬間にニコリと小馬鹿にしたような笑みを浮かべて。

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