口元を隠すものは
魔女狩りから随分と時間が経ちました。
しかし、未だに。
いえ、現代にあっても魔女は迫害されております。
そんな光景見たことない?
……それはそうでしょう。
中世ならいざ知らず、現代であれば迫害は目に見えぬ形で行われるものです。
それに中世ならば命を奪うのは他者でした。
しかし現代の迫害は他者ではなく自らに命を奪わせるのですよ。
言っている意味がわからない?
それは随分と幸運な人生を歩まれているようですね。
いえ、皮肉ではありません。
まぁ、信じていただかなくても結構ですが。
それにそもそもあなたはインタビューに来たのでしょう?
『現代を生きる魔女の事情とは!?』でしたっけ。
私も暇じゃないんです。
定時になりましたらとっとと帰らせていただくつもりなので、こんな無駄な質問をしていてよろしいのですか?
……はい。
質問にお答えしましょう。
たしか――『魔女は現代でも姿を隠して生きておりますが、この数年はさらに周りから隠れるのが上手くなった』わけですが、その理由は何故か?
というやつですね?
少し考えれば分かるでしょうに。
本当に魔力を持たない人々はお馬鹿さんですね。
良いですか?
魔法を使うには2つのことが必要なんです。
一つは魔力。
これは言うまでもありません。
では、もう一つは?
考えてみてください。
魔法を使うには何が必要ですか?
…。
……。
そう。
詠唱です。
ここまで言えば分かるでしょう?
我々がなぜ以前より見つかりづらくなったか。
え?
わからない?
嘘?
本当に?
……数年ほど前。
世界的に何が流行りましたか?
そして、それによって政府は何を命じましたか?
それをもう一度考えてみてください。
それでは、私はこれで失礼します。
寒い時期なのでどうかあなたも風邪を引かないようお気をつけて。
*
そう言って、魔女はマスクをしてそそくさとこの場所から出ていってしまった。
口元を隠す瞬間にニコリと小馬鹿にしたような笑みを浮かべて。




