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第三三話 炎の戦い

 いよいよ、対決の時が来た。

 じんたが焼却場にそおっと入っていき中の様子を探る、巨大な穴の中にベルトコンベアでゴミが流れて落ちていく。

 ボワッと火が上がって燃えていく。


「いやー!うめー!」

 その、穴の底の方から、声が聞こえる。

 そうっと覗き込む、全身炎に包まれた人型の物体が、燃えてるごみを手掴みで食べている。

 皆が覗き込む

(あの魔物は燃えたものを食べて、エネルギーに変えてる、だから、食べるものがなくなれば、己のエネルギーが尽きて小さくなり、やがて消えるのではないか)


 龍也の分析は、確信に変わった。


 職員にゴミの供給を止めてもらい、バケツ二杯の水を用意してもらう、合図とともに一斉に空気製造機の動力をお願いした


 龍也が、ゆっくりと気づかれないようにはしごを降り、じんたがゆっくりホースを下ろす、鉄パイプが壁にあったても音がしないように布を巻いている。


 下に到着しパイプを持ち、体制が整った。瞬間、龍也が合図を送った。


 ゴミの供給が、止まる。


「ん?・・・ゴミが来ねえぞ!」

「お前ら、燃やされたいのか!!」

 ホムラーが騒ぎ出した。

 その時だった。


「お前が、自分の身を、燃やせ!」

 じんたが、上から、大声で、挑発した。


「なんだとー!」

 ホムラーが、怒った、まさにその瞬間、ものすごい風が吹いてきた。

 なんだ?と驚きはしたが、火に空気である。驚く程の炎が立ち上がった。


「ふはははは!馬鹿なやつだ!火に、空気を送るとは!俺様が、強くなるだけだぞ!」

 ホムラーは、笑いながら、龍也の方へと、近づいてくる。

 しかし、怯まなかった。作戦は、間違っていない。そう、自分に言い聞かせ、空気を浴びせ続ける。


 恐ろしい程の炎が天井まで達していき、巨大な魔物になった。

 辺りのゴミが激しく燃える、龍也との距離もかなり近づいてきて、照り焼ける暑さでめまいがし、軽く焼けども負った、風で何とか凌いでいるが、活性化させている以上諸刃である。


 やがて、ホムラーの足元の、燃えカスや、ゴミが、吹き飛ばされ、コンクリートの床が、見えてきた。


「あともう少し!」

 たつやが叫ぶ、上では皆が頑張って空気を送ってくれてる、それを励みに、一歩、また一歩近づいた、

 そして心なしか、炎の勢いが、小さく見えたかと思うと、また燃え盛る。


 しかし、ホムラーの様子がおかしい。さっきまでの威勢がなくなり、後ずさりを始めたのだ。

 辺りを見始めた、遠くにゴミは多少あるが、己の体内に取り込まなければエネルギーにはならないはず、ごみを燃やしたところで、自分の分身がゴミに乗っているようなものだ。


 燃えなくなれば終わりである。


 確信した、勝機は我にありだ

「最後の、追い込みだ!」

 叫び声と共に、じんたが、水の入ったバケツを、ゆっくりと下ろし始める。

 その間も龍也が一歩前進して浴びせる。

 シンジも、急いで、はしごを降りてきた。

 ホムラーは、急激に小さくなっていた、今では、腰の位置くらいまで低くなり、もがき、唸っている。

 あと少し、あと少し、もう半分位になり小人以下になった時


「シンジ!」

 龍也が叫ぶ。バケツの水を、魔物へとぶちまけた。

 ジューッという、凄まじい音と共に、大量の煙が立ち上る。

 そして、もう一度、水をかけると、炎は完全に鎮火した。


 静まりかえった、沈黙のあと・・・


「「「うわーっ!!」」」

 上から、大歓声が、聞こえてくる。龍也は、その場に座り込んだ

「ぷはぁ〜!」深い安堵のため息をついた、汗が滝のように流れ出した。


 シンジと、目が合い、二人は笑った。心の底からの達成感に軽く笑った。

 疲労がピークになり立つ気力がなくなった;

 シンジが手を差し伸べてくれて立ち上がった、が、なかなか歩けない、やっとの思いではしごの近くまで来た。

 その時上からゆうこが「ほれ、コレ飲め」と落としてくれたのは、万能薬だった。

 じんたが水をバケツで下ろしてくれて薬をのんだ、気力が沸いてきた。

 はしごを登ると、皆が、龍也を褒め称えてくれた。

 その、賛美の中、ゆうこが、ぎゅっとハグした。


「ようやったのう、タツヤ」

 その目が、少しだけ、潤んでいるように見えたのは、気のせいだろうか。


 一行は、後日家具を貰いに来るから捨てないでくれと、職員に念を押し、一旦、我が家へと帰還した。

 少しくつろいで、うとうとしかけた時ゆうこが、


「今日バイトでないか?」

 飛び起き、慌てて着替え家を出た。

 さすがに二日目で欠勤はどんな事されるか、分からない、休むことなど全く頭になかった。


 厨房で、コンロの火を見た時、さっきの光景が鮮明に蘇ってきた。

 ニヤニヤしてる顔を見てママが、


「何?好きな子の事考えてんの?」

 と茶化してくるが、今日のことは忘れないだろう。


(……まだまだ、夜は、これからだな)

 ある意味、いい緊張感を持って、その夜の仕事を、乗り切れそうだった。

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