第一一五話 孤島の遠吠え、潮騒の詩 その六 最終話
漁師たちの、協力で、島唯一の、病院へと、運び込まれた。
ロビーの、ソファーで、応急処置を、受けながら、皆、疲労困憊の、身体で意識を、失うように、眠っていた。
ただ一人。
龍也だけが、ベッドの脇で、ゆうこの、手を、握りしめ、目を、開くのを、祈るように、待っていた。
(……石が、光った瞬間、ゆうこは『力が、みなぎる』と、言っていた……そして、気絶した……何か、辻褄が、合わない、気がするが……もしかして、また、新たな力が、覚醒して、身体が、それに、反応するために、倒れたんじゃないだろうか……それとも、どこか、やはり、無理を……)
「……何、ブツブツ、ゆうとんじゃ。……ゆっくり、眠れんじゃろうが」
その、声に、龍也は、ハッとした。
ゆうこが、目を、覚ましていたのだ。
「……ゆうこ……!……よかった……心配、かけやがって……本当に、よかった……!」
「……皆、呼んでくるな!」
龍也が、皆を起こすと、病室に、駆けつけた、仲間たちの、安堵の、声が、響いた。
ゆうこの、回復を待ち、一行は、簡易的な、治療と休息を、終えた後、柏崎へと、帰港した。
港では、漁師たちや、街の人々が、彼らを、英雄のように、出迎えてくれた。
しかし、龍也は「今日は、ゆっくり、休ませてほしい」と、頼み、一行は、戻るなり、倒れるように、爆睡した。
翌日。
龍也が、目を覚まし、外の、様子を見て、驚愕した。
「……なんだ、これは……」
彼は、慌てて、部屋に戻り、皆に、告げた。
「……表が、ヤバいことに、なっているぞ!」
その、言葉に、じんたと、ゆうこが、真っ先に、飛び出して、行った。
外に出るなり、二人は、「うわあ!」「うひょ~ !」と、歓声を上げ、もう、はしゃぎ始めていた。
シンジが「どうした?」と、龍也に、尋ねる。
「……街中が、盛り上がっている」
龍也は、そう、答えるのが、精一杯だった。
皆で、外に出て、その、光景を、目の当たりにする。
そこには、自分たちが、知っている、柏崎の、街は、なかった。
街中が、色とりどりの、飾り付けで彩られ、屋台が軒を連ね、人々が、歌い踊り、まさに、お祭り騒ぎだったのだ。
それは、島の、解放を祝う、街を挙げての、盛大な、祝祭。
英雄たちの、凱旋を、祝う、柏崎の、祭りだった。
龍也は、その、あまりにも、賑やかな、光景に、呆然としながらも、その、中心へと、吸い込まれていく、仲間たちの、笑顔を、見つめていた。
彼らの、旅は、また、新たな、喜びの、ページを、めくろうとしていた。