プロローグ
おっさんなんでなかなか先に進みません
真田龍也、五十五歳。
二十年以上働いた大衆居酒屋は、コロナ禍を経て客足が戻らず閉店。
会社都合の退職金を手にしたが、再就職は厳しい年齢だった。
「居酒屋の店長経験なんて、もう役に立たねぇんだな……」
昼間はパートに出ている妻の視線もどこか冷たい。
息子は社会人になり家を出て久しい。
居間にいれば小言を言われ、自然と自室に籠もる生活になっていった。
頼みの綱はパソコン。求人サイトを覗いては、応募して落ち、返事も来ない。
そんなある日――。
「在宅OK、空いた時間で高収入。初心者歓迎」
怪しげな求人広告が目に飛び込んできた。
ただし書きには、こう記されていた。
成果報酬+アルファ。
時給換算:およそ1100円。
「……とりあえず、やるだけやってみるか」
半信半疑で応募フォームに細かい情報を打ち込み、送信。
翌日、メールが届いた。
件名は「採用おめでとうございます」。
本文には簡単な挨拶と、一つのURLリンクが添付されていた。
――クリックした瞬間。
眩い光に身体ごと引きずり込まれ、気づけば龍也は部屋着のまま、見知らぬ木造の小屋に座り込んでいた。