疫病の影、宮廷を覆う
昨夜、就善堂の月明かりは、とりわけ暖かく甘美だった。布団の中から染み込む粛宗の温もりが、まだ体にまとわりついているかのようだった。彼の温もりは、荒れ果てた宮廷においても頑丈な根となり、私の心に深く刻まれた。
しかし、その甘い余韻が乾ききらないうちに、便殿に座る粛宗の顔は、あまり明るくなかった。
地方から始まった小さな暗雲が、ゆっくりと、都を絞めつけるように静かに近づいてきていた。奇妙な噂は、氷のように薄くなった民心を、さらに冷たく凍らせた。今日、暗行御史から報告された内容によると、病状が重篤で、一夜にして家族全員が倒れる事態が継続的に増えており、嘆きの声さえ枯れた亡骸が、道端に放置されているという悲惨な囁きが、風に乗って宮廷の門の内側にまで染み込んできた。民衆の叫び声は、宮廷いっぱいに差し込むもの寂しい影のように深まっていた。
オクチョンの顔もまた、急激に暗くなった。古来より、災難や災害は王の徳を伴うと言われてきたため、今の粛宗にとっては、決して良い出来事ではなかった。
「様、殿下は都市に蔓延した疫病のせいで、昼夜を問わず眠れずにいらっしゃいます。朝廷の重臣たちも良い手立てがなく、毎日激論ばかりしているそうです。」
キム尚宮の顔にも、心配が満ちていた。朝廷の重臣たちとの会議は、毎日互いの責任をなすりつけ合い、派閥争いに明け暮れて、疫病について議論すら始められなかった。医官たちは、激しく広がる疫病を見て、無力感に浸っていた。民衆の呻き声が宮廷の中にまで聞こえてくるかのように、宮廷全体に重苦しくもの寂しい死の気配が漂っていた。
粛宗の顔には、憂いが満ち、疲れ切った様子がありありと見て取れた。王として民を守れない無力感に、彼は深く絶望しているようだった。彼は誰よりも民を大切にする王だったため、彼の苦悩がそのまま伝わってくるようだった。
-----
同じ頃、宮廷の外にある張希載の家では、冷ややかな空気が漂っていた。
彼はホ・ジョク(許積)と向かい合って茶を飲んでいた。ホ・ジョクは心配そうな表情だったが、張希載の顔には、微かな微笑みさえ浮かんでいた。
「疫病がこのように蔓延し、民の苦痛は並大抵のものではありません。朝廷は混乱し、西人たちは責任転嫁に汲々とし…。」
ホ・ジョクはため息をつきながら言葉を続けた。しかし、張希載は彼の言葉を遮り、冷ややかな眼差しでホ・ジョクを見つめた。
「ホ大監、疫病は天が与えた機会かもしれません。」
ホ・ジョクの眉間が、一瞬、ひきつった。病で死んでいく民を前にして「機会」と語るヒジェの冷たさに、彼はためらい、困惑した表情がありありと見て取れた。
「それはどういう意味だ?」
張希載は茶碗をゆっくりと置き、低い声で言った。彼の目には、ただただ生臭い野心だけがきらめいていた。
「中殿の無知と無能を天下にさらけ出す機会でございます。民が苦しんでいるのに、中殿は自分の体面と安寧だけを心配するでしょう。我々は、その隙を狙うべきです。」
ホ・ジョクはしばらくためらった。先日、中殿が王の機嫌を損ねたという噂は聞いていたが、詳しい話はよく知られていなかった。しかし、彼は何かを知っているようだった。ホ・ジョクはしばらく、咳払いをして気まずい沈黙を続けた。
「殿下が最も心にかけていらっしゃるのは民心です。民の怨嗟の声が天を突けば、殿下もこれ以上中殿を庇うことはできなくなるでしょう。ホ大監、我々が『風を起こそう』と決意した時が、まさに今でございます。」
ホ・ジョクも躊躇しているように見えたが、その言葉に同意するように頷いた。張希載の言葉には、一片の躊躇もなかった。彼は疫病を単なる災難ではなく、中殿を廃位させ、南人勢力を再び朝廷の中心に引き上げる絶好の機会と見ており、疫病をいかに政治的に利用するかという計算で満ち溢れていた。彼は密かに情報を集め、宮廷の内外の動きを注視しながら、周到に次の手を準備していた。
宮廷は疫病の恐怖に包まれていたが、その裏側では、権力に向けた巨大な暗闘が静かに始まっていた。