宮廷に足を踏み入れた瞬間、分かった
宮廷に足を踏み入れた瞬間、分かった。
漂う空気が以前とは違っていた。
すれ違う視線、息を潜める気配、ちらりと見る眼差しまで、
すべてが一人の人物に向かって傾いていた。
張玉貞。
宮女たちの低い囁きが、風のようにかすめた。
「チャン女官が、微笑んだんですって。」
「殿下が、ご自ら花の枝を折ってくださったそうです…」
風に乗って飛んでくる声を聞き、
私も知らず知らずのうちに口角が上がった。
(よし。我らのオクチョン、なかなかやるな。)
ちょうど最近、殿下がオクチョンのことで
私を呼んでいると聞き、
一度お目にかからなければならないと思っていたところだったが、
(そういう理由だったのか)と合点がいった。
明るい陽射しがゆっくりと広がる大殿は、
静けさと荘厳さで満たされていた。
殿下は龍袍をまとい、ゆったりと椅子にもたれかかっていた。
細く開いた瞳。
無関心に見えたが、その中に隠された感情の流れははっきりとしていた。
慎重に頭を下げた。
「微臣、チャン・ヒジェ、殿下にお目通りいたします。」
表面は静かだが、心の内はそのまま読み取れた。
相変わらず無関心そうな声の返事が聞こえてきた。
「座れ。」
簡単に会釈をして、慎重に席についた。
彼の鋭い眼差しは、すでに私を品定めしていた。
そして、長い間待っていたかのように、すぐに口を開いた。
「オクチョンに会ってきたのか。」
「そうでございます、殿下。」
粛宗は短く「ふむ」と咳払いをした。
自らの感情を抑えているようだった。
「まだ記憶は完全ではないのか。」
「はい。しかし、微臣のことを正しくお分かりになるのを見ますと、
少しずつ良くなっているかと存じます。」
短い問答。
その中で、慎重に殿下の眼差しを観察した。
何かが複雑そうな殿下の瞳。
近くに置きたいと願いながら、
同時に、失うことを恐れている心。
確信した。
殿下の心は、すでにオクチョンに深く根を下ろしていた。
「そなたの目には、今の妹はどのように見えるか。」
しばし静寂が流れた。
本心を探るような質問に、私は浅く微笑んだ。
「この上なく愛らしいお方になられました。」
殿下の眼差しがわずかに揺れた。
予想外の答えだったようで、
彼の眉が少し動揺したが、
すぐに何事もなかったかのように頷いた。
「そなたが見てもそう思うのであれば…私の目は間違っていなかったようだな。」
恐れ多いとばかりに深く頭を下げた。
言葉は控えても、心は隠せない。
「妹が殿下を遠ざけようとするのであれば、それはきっと、
まだ完全ではない記憶が、溢れる殿下の心についていけていないからかと存じます。
殿下も、オクチョンの過去の性格をよくご存じではございませんか。」
私の言葉に、もたれかかっていた殿下が興味深そうに体を起こした。
彼の瞳は、まるで新しいものに直面した時の好奇心に満ちていた。
殿下の行動を見て、私は悟った。
(…やはり、避けていたんだな。)
殿下の顔に、本心が分からない微妙な微笑みが浮かんだ。
「やはり、人を見る私の目に狂いはなかったな。
気遣ってくれて感謝する、近いうちにまた呼ぼう。今日はこれで下がってよい。」
殿下の命に、彼に従い微笑みながら頭を下げ、
礼を尽くして慎重に退出した。
大殿を出る道。
静かに歩を進めた。
息を潜めたように静かな宮廷。
だが、その中には見えない緊張と噂が広がっていた。
ゆっくりと、
しかし確実に、
すべてがオクチョンを中心に集まりつつあった。
かすめる服の裾、息を潜める気配、慎重な眼差し一つひとつ。
すべてを読み取った。
殿下の感情も、
宮内の流れも。
よし。
ゆっくりと顔を上げた。
雲一つない、清明な空が広がっていた。
風は、我々が望む方へ、
ゆっくりと向きを変えつつあった。