侮辱の夜
就善堂の夜は、相変わらず殿下の温もりに満ちていた。薄暗い夕暮れ、彼と向かい合って他愛もない冗談を交わす時間は、私にとって最も幸せな瞬間だった。彼の穏やかな笑い声が、就善堂の瓦を伝って遠くまで広がるようだった。殿下の指先が静かに私の茶碗を包み込み、その温もりに身を預けて、ささやかな幸せを享受していた。宮廷に戻ってから、殿下はほとんどいつも私の居所で一緒に寝た。私がどこかへ消えてしまうのではないかという恐怖があるから、だからずっとそばにいたいのだと、冗談のように言った言葉にも胸がときめき、幸せな気持ちが巡った。
そんな風にしばらく話をしていると、外からキム尚宮が私を呼んだ。
「何か用か?」
殿下がいらっしゃるので、門は開けず、外で話を続けた。
「中殿様がお呼びでございます。内命婦の女性の礼法教育がまだ終わっていないので、今すぐ中宮殿にいらっしゃるようにと仰せでございます。」
戸惑った殿下の表情を見て、私は少し微笑んだ。
「礼法教育を…この時間にだと?」
「少し行ってまいります。殿下。」
大したことではないというように微笑んで見せた。最近、中殿からの呼び出しが頻繁になっていた。何かを継続的に圧迫しようとしているような…むしろ大妃様よりも、もっと姑のような感じというか。
キム尚宮と共に殿閣の外に出ると、交泰殿の尚宮が厳粛な表情で到着した。彼女の声は平坦だったが、その中には権威が宿っていた。普段なら、中宮殿で礼法教育を夜遅くまで続けることは稀だった。ましてや、尚宮でもない、従二品の淑儀という品階であれば、わざわざ直接中宮殿に行って教育を受ける必要もなかった。これは明白な名目上の指示であり、露骨な軽蔑だった。私の隣に立っていたキム尚宮の顔が、冷ややかに強張った。
「様、この遅い時間にどうして中宮殿へ行かれるのですか?明日の朝にお目にかかるということで、再度お申し出するのがよろしいかと存じます。」
キム尚宮は我慢できず中宮殿の尚宮に話しかけようとしたが、私は首を振って彼女を止めた。中宮殿の尚宮の目に宿る微妙な冷笑と軽蔑を読み取ることができた。それは単に礼法を教えようという意図ではなかった。王の寵愛を受ける私をひざまずかせようという、露骨な侮辱だった。私の感性では理解しがたい、権力を使った残酷な遊びだった。
(まあ、どうせいつか直面することだったのだろう。)
裾を整える手つきは微かに震えたが、感情は冷ややかに冷めていった。殿下の視線が留まっていた就善堂の温かい気配とは異なり、中宮殿へ向かう道は、ひたすら冷たく感じられた。冷たい宮殿の影が差す夜、冷ややかに冷めた眼差しで中宮殿へと足を進めた。
中宮殿の大広間には、すでに内命婦の尚宮たちが静かに座っていた。蝋燭の光がかすかに輝く中、彼女たちの視線が一斉に私に向けられた。中殿は何も言わずに端然と座っており、私が広間の端にたどり着くと、冷たい視線を投げかけた。その視線はまるで刃物のように、私の心臓を貫くようだった。
「淑儀は、どうしてこんなに遅れたのですか?内命婦の法度と紀律を正すことは、側室として当然守るべき道理であるのに、こんなに怠けてもよいとでも?」
中殿の声は低く落ち着いていたが、その中には非難と軽蔑がそのまま込められていた。私は丁寧に頭を下げたまま答えた。
「申し訳ございません、中殿様。」
「申し訳ないという一言で済むことではありません。『内命婦の紀律を正す女性の徳目』について論じなさい。」
突然の質問に、周りの尚宮たちがざわついた。中殿は普段、このような形で尚宮を侮辱することはなかった。しかも今は夜も更けている時間。明らかに私を窮地に陥れようとする意図だった。しばらく躊躇した。頭の中では、朝鮮時代の複雑な礼法知識よりも、不義を我慢できないという感情が先に浮かんだ。
(予想はしていたが、ここまで露骨だとは。)
息を整え、ゆっくりと頭を上げた。中殿の冷たい眼差しが私を貫くようだった。薄く微笑んだ。揺るぎない、むしろ以前よりも堂々としてしっかりとした微笑みだった。
「中殿様、内命婦の紀律は厳格な礼法だけで確立されるものではないと存じます。」
中殿の眉が微かにひくついた。あえて自分の言葉に反論するとは。
「むしろ徳をもって下の者を包み込み、包容する心で内命婦を治められた時に、初めて真の紀律が立つものと存じます。また、殿下の寵愛を受けることは天の意思でございますので、私的な気持ちを抱かず、万民の母として寛大に見守ることが、最も大きな徳目だと存じます。」
私の声ははっきりとして堂々としていた。あえて王妃の前で「私的な気持ち」という言葉を口にするとは、周りの尚宮たちは驚愕し、息を潜めた。中殿の顔には不快な色がはっきりと表れていた。固く握った手が微かに震えているのが見えた。中殿の唇が何かを言おうと動いた、その時。
「中殿。」
敷居の向こうから、冷たく整った声が流れた。風も息を潜めた夜、その気配一つで大広間が冷ややかに冷え込んだ。殿下だった。顔色は穏やかだったが、瞳にはすでにすべてを見抜いた気勢が宿っていた。その視線が中殿様に向かって静かに降り注いだ。